動き出す黒


「ねえ知ってるあげはちゃん?」

『何を?』

「最近この近くにね、鎧さんがいっぱい歩いてるんだって」

『鎧?』

「そう。しかも中身は空っぽなんだって!きっとお化けなんだよ!」

『お化け、ねー…』



……なーんて。軽く聞き流していた一週間前のあたしマジ殴りたい。
同じ孤児院に住んでいる子に聞いた話の通り、あたしの目の前には数十体の鎧の軍団が。こんな数の鎧どこから来たのさ。

あたしがこの異様な光景を目の当たりにしているのは神田を連れ帰った次の日のこと。
あたしは特にすることもなく村のはずれをぶらぶらと散歩していた。そこへ現れたのはこの鎧たち。
見たところ本当に人は入っていなさそうだ。じゃあどうやって動いているのか。…考えても答えなど出てくるわけもなく。


『……うん。関わらないのが一番だな』


幸い鎧たちはあたしを標的にしてる風でもないので、ここはこの場から離れることが最善策だと判断した。

ドドドドドッ


『!』


あたしが鎧に背を向けた直後。背後で爆発音が響いた。
振り返ってみるとそこには無残に砕けた数体の鎧と、それらを撃ったのであろう機械っぽい奴ら。
え、何アレ生き物?いや、機械?てか空に浮いてるんだけど!?

あたしがじっと見ていればその機械たちと目が合った。向けられる銃口。
あ、コレやばい。

こちらに向かって撃ちこんでくる気なのだろう。
あたしはいつでも避けられるように神経を尖らすが、その必要はすぐさまなくなった。


『え、』


あたしの横を通り抜けた黒。それは長髪を靡かせ数体の化け物を次々と斬っていった。


『か、神田ァ!?』


そう、あたしの背後から現れ、瞬く間に化け物を倒してしまったのはつい昨日出会ったばかりの男。神田だった。
あたしが声を上げたことによって神田がこちらを向く。


「…なんでテメェがここにいる」

『その言葉そのままバットで打ち返してやるよ』

「…チッ」

『アンタあたしと会ってから舌打ちしかしないなオイ』

「邪魔だ。下がってろ」

『へ?何のはなs「来るぞ」……いや何が』


いまいち神田の言葉の真意が分からず、あたしが声を発したと同時にさっきよりも数の増えた化け物が現れた。
そして他の奴らとは形や雰囲気が違う奴が一体。


「この前のLv.2か」

『ヤバいどうしよう。神田の話についていけない』

「………(緊張感のねぇ奴…)」


神田が一瞬こっちを見たような気がする。が、それに気付いた時には彼の視線は化け物たちに向けられていた。


「行くぞ、六幻 抜刀」


神田が持っていた不思議な刀。それは神田が刀身を指でなぞることによって刃を見せた。


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