『じゃあいってくる』
「ああ、いってらっしゃい」
そうしてじゃんけんに勝ったあたし、晋助、辰馬はスーパーに向かうべく家を出たのだった。
ちなみに負けたのは銀時だ。アレだね、言い出しっぺの法則。
「…で?何買やァいンだよ?」
スーパーの食品売り場を三人で歩く。あたしは小太郎から頼まれたものが書かれたメモを取り出した。
『えーっと…買うのは今日の夜と明日の朝と昼の弁当の分だから…』
「弁当作んのか」
「さすがあげはじゃき!」
『いや、小太郎がその方が経費が浮くって言ってた』
ちなみに料理をする(できる)のはあたしか小太郎か銀時なのだが、銀時は絶対朝起きてこないと言える。だから自然と朝に弁当と朝食を作るのはあたしと小太郎になるんだよね。
『じゃあさっそく買うものを発表しまーす。……まずはジャガイモと人参と玉ねぎ』
「それ明らかにカレーだな」
『いいじゃん定番で』
「あげはー、とってきたぜよー!」
いつの間に動いたのか辰馬が野菜を抱えて戻って来た。
………ん?
『辰馬くーん…それ玉ねぎじゃなくてネギじゃん!!』
「?同じようなモンじゃろ?」
『全然違ーよ!!もう形からして違うわ!!似てんの名前だけじゃねーかァァァ!!』
「アハハハハハ間違えてしまったきに」
そう言って辰馬は元あった場所にネギを戻し行く。あたしは不安だったので自分で玉ねぎを手に取りカゴに入れた。
そんなこんなで買い物を済ませ、スーパーを出る。
疲れた……。さすがに並盛に着いてすぐ買い物とか体力使うわ。早く帰りたい。ど○でもドア欲しい。
『…さ、帰ろっか』
くるりと後ろを振り返ってあたしは固まる。
それもそのはず、さっきまで後ろにいたはずの二人がいないのだ。
おかしくない!?さっきまでいたよね!?二人で酒がどうとか言ってたよね!?なのにあたしのど○でもドアのくだりのほんの数秒で消えやがったよあいつら!!
『この年で迷子とかあいつら……』
………あれ、ちょっと待てよ。あっちは二人でこっちは一人。
も、もしかしてもしかすると……あたしが、迷子………?
『イヤ、ないな。ウン、ない!だってあたしまだスーパーの前にいるし!?勝手に動いたのあいつらだし!?あたしが迷子なわけないじゃーん』
アハハと笑ってみせるあたしは周りから見ると、相当イタイ子に違いない。
『……もういいや。とりあえず家帰ろ』
あいつらだって夕飯時になればお腹空いて帰って来るよきっと。
あたしは自分に言い聞かせて歩き出した。
「――――」
「――――」
『…ん?』
少し歩いたところで微かに声が聞こえた。
ここは商店街。べつに声が聞こえることなんて珍しくもないだろうに、何故だがすごく気になった。
夕暮れ時、声の聞こえた場所を、薄暗くなった小道を、好奇心で覗いてみる。
そこには、
「おい、ガキィ金出せよ」
「俺ら今金なくて困ってんだよねー」
「あ、あの…俺…」
二人の男と一人の少年がいた。と言っても暗くて顔がよく見えないから声と背格好だけでの判断だけど。
…まあ、とりあえずカツアゲだねコレ。可愛そうに少年。ドンマイ。
あたしは心の中で少年に背を向けて帰ろうとした。
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