「…銀ちゃんたち、どこ行っちゃったアルか?」


ポツリ、神楽が空を仰いで呟いた。
彼女のこの言葉を聞くのはもう何度目だろう、と新八はソファに座り考える。いつもの社長椅子に座っているのはだらしない銀色ではなく幼い少女。
この場所はこんなに静かだっただろうか。

事の発端はある一人の女が消えたことだった。
ここの従業員である女、紅藤あげは。彼女は二週間前に突如姿を消した。
最初はすぐに帰って来るだろう、と軽く考えていた。しかし一日、二日、三日。いつまでたっても帰って来ない。
そして追い打ちをかけるように彼女を捜していた男、坂田銀時も一週間前に姿を消した。手がかりも何もないまま。


「……神楽ちゃん、」

「…………」

「二人を捜しに行こっか」


新八は少しでもこの少女が安心できるようにと笑いかける。そう、腹にものすごい衝撃が来るまでは。
ドゴッ


「ゴブッ!ちょ、何すんの神楽ちゃんんんん!?」

「うるさいアル。お前に言われずとも捜しに行くヨこのクサレメガネ」

「アレ?ひどくない?ねえ、ひどくない?」


定春を従えて万事屋を出て行こうとする神楽を新八は慌てて追いかける。
ちょ、まだお腹痛いんですけど。


「…銀ちゃんもあげはも強いアル。きっとどこかでバカやってるだけヨ」

「うん、そうだね…」


あの二人がそこらにいる奴らより遥かに強いことは傍で見てきた自分たちがよく知っている。
だから。


「あの二人が帰ってきたら思いっきり殴ってあげようね」

「オウヨ!」


だから、大丈夫。
新八と神楽は今日も歌舞伎町を走り回る。あの銀色と黒色が帰って来るのを待ちわびて。


***


「アイツらが行方不明、ね…」


ここは真選組屯所。部屋で書類整理をしながら土方は先日聞いたことを思い出していた。
あのメガネとチャイナが言うには万事屋と紅藤が消えたらしい。あのガキ共がアイツらを捜して欲しい、と俺達にまで頼みに来たくらいだ。よっぽど厄介なことになっているのだろう。


「なんでィ。土方さんも旦那たちのこと心配してんですかィ?」

「…………」

「…………」

「…いつからそこにいた」

「最初っからいやした。……土方さんの隙を狙って」

「オイ、ボソッと何言ってんだテメェは!!」


いつのまにか自分の部屋に居座っていた沖田に対し、土方はため息をこぼした。
コイツはアイツらに相当懐いていたからな。今回のことも気になっているのだろう。


「…で、土方さんの方は何か掴めやしたか?」

「いや…。まったくだ。ホントにあのヤロー共はどこに消えたんだ?」

「…チッ。使えねーな。死ね土方」

「テメェが死ね」


死ね土方、死ね沖田。そんな言葉が何度か繰り返された後、部屋の襖が勢いよく開けられた。


「副長!」

「……山崎か。何だ」

「あの…、」


部屋に入って来たのは山崎だった。山崎はどこか躊躇うように言葉を濁す。


「言いたいことがあるならはっきり言いやがれ」

「あ、それがですね…」


次に発せられる彼の言葉に土方も沖田も驚きの表情を見せることになる。


「実は京にいる高杉が行方不明という噂が今攘夷浪士たちの間で広まっているらしく…。それで、ですね…」


旦那たちと何か関係があるんですかね……?
そう続けられた山崎の言葉に土方は舌打ちをした。
どうやらこの件。自分たちが思っていたより厄介らしい。




視点を変えてみることも大事
(本当、何やってんだよアイツらは)




  

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