※パロです。本編では全く描写されていないことを好き勝手やってます。無理な方はお引き取りお願いします。



並盛町のとある住宅街から少し離れた場所にあるその家屋は、周囲から浮いていた。呆気にとられてしまうほど大きな屋敷で、現代には珍しい日本家屋である。
その縁側にて、二人の男女が肩を寄せ合っていた。春の暖かな陽射しを浴び、眠気を誘う鳥の声に耳を傾けている。
雲雀 恭弥。かつて並盛最凶の男と恐れられていた彼は、自身の片割れであるなまえの手を握っていた。
その顔にあるのは穏やかな表情で、隣に座るなまえも口許に小さな笑みを湛えている。
リング争奪戦から五年の月日が経ち、彼等を取り巻く環境は大きく変化していた。
綱吉は正式にボンゴレのボスとなり、京子と婚約をした。あの獄寺までもがハルと付き合い始めたと聞いたときは、驚きと納得が混ざった、よく解らない感情を覚えたのを覚えている。
そして、恭弥となまえの左手の薬指には同じ形の指輪がある。奥の部屋には、なまえのために拵(こしら)えられた白無垢がある。なまえの中には、新たな命がある。
なんと幸せな日々だろうか。青空を見上げ、ゆっくりと流れている白い雲を仰ぎ見る。
ザンザスのことを忘れたわけではない。今でも彼は大切な人だ。
しかし、ザンザスよりも大切な人が出来たのだ。いや、正しくは思い出したと言うべきか。
愛しく恋しい、自身の片割れを―――


「ねぇ、なまえは今幸せかい?」


突然のその問いにキョトンとした後、なまえは小さく笑った。馬鹿ね、と楽しそうに前置きを置いて、


「私は幸せだよ。でも、少し怖いかな」
「…何でか聞いてもいい?」
「うん……。私恭弥に酷いことをいっぱいしたでしょ?凄く後悔しているし、申し訳なく思ってる。んだけど、ね。
そんなことをしたのに、まだ恭弥の傍にいて幸せを貰おうとしている。そんな自分が、少し怖い」


脅えを含んだその自白は、声を僅かに震わせていた。自身の恐れを隠すかのように、恭弥の手を握り返す。
暖かく涼しい風が頬を撫でた。
馬鹿だね、と恭弥が言う。返事はない。しかし、構わずに続けた。


「なまえはそんなことを言って、僕にどうして欲しいの?それじゃあ、まるで許してもらいたくないようだ」
「うん……、許さないで」


か細い声で紡がれた言葉に、もう一度馬鹿だねと返す。
本当に大馬鹿だ。僕がなまえを許さないわけないじゃないか。
言いながら、頬に口づけを落とす。
それに擽ったそうに目を細めるなまえの顔中にキスを降らした。


「許す許さないじゃなくてさ、これは本能の問題なんだよ。
例えなまえに殺されても、理性がなまえを憎んでも、それでも僕は君のことを好きなんだよ。なまえはそれを解っていない」


僕のことを甘く見すぎだよ。最後にそう言って、二人の唇を柔らかく重ねた。
好きだよと紡がれた言葉は、果たしてどちらのものか。
答えはね―――





 
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