ずっとずっと彼を好きでいると思っていました。
琥珀の髪も少しかさついた指も、ちょっと口が悪いところも悪戯好きなところも、大事な大事な彼の好きな部分でした。
ずっとずっと彼の一番でいられると思っていました。
茜色の髪も筆だこが目立つ細く薄い手も、涙脆いくせに意地っ張りで強がりな所も、全部愛しいと思っていました。
いつ、僕らは道を過ったのでしょうか。
否、違えたのでしょうか。
いつも彼を見ていました。彼の一挙手一投足が僕の心に陽を差し、時に薄ら寒くさせました。いつからか、僕の胸には鈍い傷みが走るようになりました。
いつまでも僕だけを見ていると思っていました。彼の揺らめく穏やかな炎の瞳を感じる、それだけで僕は強く生きられる気がしました。今では、温もりを享受していたのが遥か昔の事のように思えます。
最後の冬が終わりを告げようとし、焦がれるような春は僕らの別れを謳います。
もう愛とは呼べないそれだけれど。
どうか彼の人が幸いでありますように。
願わくば今生で再びまみえる事などありませんように。
00:02(0)