1番愛してるはず




「ゾーロ」
「…んぁ?」
「楽しかったか?」
「…ん、まぁな…」

2年ぶりに一味が再会してから初めてのゾロの誕生日祝いの宴。
皆にプレゼントを渡されて、祝福される姿は少し恥ずかしげで、それでもやっぱり嬉しそうで、こっちまで幸せな気分になった。

そして、一味のほとんどが潰れてしまった夜。いくら飲んでも潰れないゾロと、飲まないようにセーブしていた俺だけが今起きている。
粗方の片付けを終えて、後方甲板へ向かえば1人でまだ飲み続けるゾロがいた。

「…あっちでも祝ってもらったんだけどよ…」
「ゴースト娘ちゃんに?」
「あと、ミホークに」
「へぇ…意外と平和だったんだな」
「2人と、あとヒヒたちにも祝ってもらった」
「ヒヒ?」
「なんか、島にめちゃくちゃ住んでるんだ。すげぇ、頭良いんだぜあいつら」
「ふぅん…こっちは……思い出したくもねぇがな…」

より広くなった背中に抱きつきながら、ぽつりぽつりと言葉を交わす。

肩に顎を乗っけてすぐ横にある顔を見る。月影に照らされた穏やかなゾロの顔はとても穏やかで口元には少し笑みが浮かんでいる。それは魔獣とか、海賊狩りなんて恐れられるイメージからは程遠くて、なんだか可笑しくなってしまう。

こんなにも、"素"を見せてくれるゾロ。
ああ、強くなったんだなと、ゾロの心のゆとりを見て確信する。

「お前はさ…その祝ってもらった奴を倒さなきゃいけねぇんだな…」
「まぁな…確かに情は生まれた。…けど倒すべき相手には変わりねぇ」

俺は、俺の野望のために生きている。
赤い瞳が力強く語っていた。

「…そっか。…そうだな。」

俺もニンマリと笑いながら頷く。
奥底でギラリと燃えるような瞳とその強い意志に俺は惚れ惚れとして、また、誇りに思う。俺のゾロはこんなにも直向きに生きているのだと。

「な、ゾロ。誕生日おめでとう」
「…もう、日付変わってんじゃねぇか?」
「でも、言いたくなったもんは仕方ねぇだろう?」
「なんだそりゃ…」

額に、瞼に、頬に、唇にキスをする。祝福と感謝の意と愛情を込めて。

後ろからで窮屈な口づけ。だけど、それ以上にゾロが愛おしいから、夢中で顔中に唇を当てる。

「ん…コック…」
「…ん、なんだ?」

身体をこちらに向けて胡座をかいた俺の脚の上に乗るゾロ。顔が見えなくなったのがほんの少し、惜しく思えた。
ゾロは俺の首に、俺はゾロの腰に腕を回して、先ほどよりも身体を密着させる。

とくり、とくりと心音が聞こえて、ちゃんとこいつは生きてるんだと実感させてくれた。

「……ありがとう、な」
「…うん」

ゾロの思考は至ってシンプルだ。
けれど、単純だからこそ、それを汲み取るのは難しい。すぐに理解できるのは似たような思考回路を持つルフィだけだ。
俺はゾロの心情を考えながらじっくりと言葉の意味を読み取り、言葉を返す。

「な、ゾロ」
「…ん」
「俺のこと好きか?」
「……多分」
「くく、多分かよ」
「…だって、わかんねぇし」
「そうだな…わかんねぇよな…くく」
「んだよ…」
「いや……ふは、なんでもねぇよ」

ゾロは殺意とか憎しみの負の感情を察するのが得意だ。
それに反して、愛情とか優しさなどの正の感情にはてんで鈍い。自分のにも、他人のにも、気づくことができない。

だから、好きかと問われてもわからないのだ。気づいていないのだ。
拗ねるように答えるゾロが愛おしくて微笑ましくて、つい、笑ってしまう。

子供をあやすように、背中を軽く叩いて、ゆらゆらと身体を揺らす。
ゾロと2人きりになると、同い年なのにどうしても親のような気持ちになってしまい、こうしてしまうのだ。

「ゾロ…寝るか?」
「……ん」

とろとろと身体が緩み、体温も高くなってくるとゾロは半分眠ったような状態になる。
全体重を俺に預け、額を肩に擦り付けて甘えている。本当に子供のようだ。成人しているくせに。
なんて思うのにそのままにさせているのは、惚れた弱味とゾロが甘えるのは俺だけだからだ。

魔獣でもあり、男の中の男でもありながら、俺には甘えたな子供にもなる。


「ゾロはさ、きっと俺のことがすげぇ好きだぜ」

腕の中で眠るゾロに話しかける。
もちろん、返事はない。

いつになったらわかってくれるのかな…
愛を知らないゾロに寂しくなる。けど、わかるようになる日が来るのが楽しみでもある。

また、額にキスをした。
あと少しで夜が明ける。



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