マリモのメガネ




「おはよ、サンジ」
「はよ、ゾロ…あれお前」
「うん、気づいた?」
「そりゃ気づくよ…変えたんだな、メガネ」
「おう」

今日は俺より先にゾロが教室にいた。
既にカラコロと口の中でいちごの飴を転がしながら何やら難しげな本を読んでいた。
大していつもと変わらない朝のゾロ。

でも、いつもと何か違う。そう思ったのは、昨日までの黒縁のメガネから新しい青い縁のメガネになっていたのが原因だった。
爽やかな青色のそれはゾロの顔によく似合っている。

「へぇ、いいな、青も」
「そうか?」
「うん、キレーじゃん。また悪くなったのか?」
「ん…席替えで1番後ろになってからさ、見えなくって」

先週の席替えでまた隣同士になったのはよかったけど、1番後ろの席になったせいでゾロは黒板の字が見にくくなったらしい。しょっちゅうなんて書いてあるのか聞かれたのを思い出す。

「それで、変えたんだ」
「うん……あの、な」
「ん?」
「ホントはレンズだけ替えようと思ったんだ」
「んじゃなんでフレームごと?」

ゾロはズバ抜けて頭がいい。
試験では常に学年トップだ。偏差値が然程高くないここでは「我が校の希望の星」と先生たちから期待の目で見られている。
でもその反動なのか。人と接したり、自分の思っていることや感情を表現したりするのをとても苦手としている。
ほとんど喋らないし、クラスメイトと会話もしない。それがクールでステキと女の子の間では好評なのだけど。

でも、何故か俺とは気が合うらしく、よく話すし一緒に行動する。
女の子が大好きで、野郎なんてどうでもいい俺もゾロとなら一緒にいてもいいかなと思える。

「これ店で見たときな、サンジの瞳みたいだって思ったんだ」
「……そのメガネが?」
「うん、綺麗な青で透き通ってて、綺麗だから」
「そ、…そっか」
「うん、……似合わねぇ?」
「いや、全然。むしろすげぇ似合ってるぜ?」
「…そっか、よかった」

へにゃと笑うゾロ。
最近ようやく笑うという表情が作れるようになって、こいつの魅力がより一層増してきている。

…にしても…
俺の目の色だからってそのメガネにしたのか、ゾロ…。
確かに俺の瞳は海みたいと皆に言われるぐらいまっさらな青色。昔から日本人離れしてる自分の容姿が嫌いだった。
けど、ゾロはそんな俺の青と同じで綺麗だからメガネをそれに変えたらしい。

すごく嬉しい、でもなんかすげぇ恥ずかしい。
なんだかゾロのもの選びの基準になってる気がして。
ちょっとずつ、俺がゾロの中で特別な存在になってる気がして。

「うん、綺麗だぜ」
「だろ?ちょっと視界に入ってくるんだけどさ、それも綺麗なんだ」

ああ、違うってゾロ。
お前が綺麗って言ってるんだよ

「なあ、ゾロ?」
「…ん?」
「…飴ちょーだい」
「これか?」
「うん」

べ。とまたこの前みたいに舌を出してかなり小さくなった飴を見せる。
一週間ぐらい前だったよな、これと同んなじやり取りしたの。覚えてんのかな、コイツ。…きっと無駄に良い記憶力持ってるから完璧に覚えてんだろうな

「…?なんで笑ってんだ?」
「いや、なんでもねぇ。サンキュー」
「…ふーん……?あ…そろそろ飴無くなる…」
「今日帰りに買ってくか?」
「…おうっ」

頭良いくせにズレてて鈍いところ、でも性格は素直で小さいガキみたいなところ。純真無垢って言葉がぴったりなこの可愛い野郎に俺は惚れている。

まだ、伝えられないけど

「ゾーロ」
「なんだ?」
「今日の数学の課題見せてくんない?」
「…やだ。たまには自分でやれ」
「うえー、嘘だろぉ?」
「……教えるならいい」
「ホントかっ?じゃあ、お願いしまーす」

少しズレたメガネを中指でくいと上げる知的な動作に、少しドキリとした。
ゾロ、俺はお前にベタ惚れみたいだ。



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