ダメな大人




あいつに会いてぇと思った。


緑の髪はボサボサの癖にふわふわ、無精してるのにかっこよく見える髭、目はガキみてぇにキラキラした赤。職業、旅剣士。年齢、30代後半(俺の予想)。変わったおっさん。
髪はサラサラのブロンド、髭はきっちり整えていて、目は綺麗に澄んだ青。職業、フレンチレストラン副料理長。年齢、25。完璧な俺。
どうやっても関わりそうにない俺らは何故か、付き合ってる。

俺は副料理長というまともな職に就いてるから忙しい。
あいつは旅剣士(全国各地を転々としながら剣道をしているらしい)で色んなとこをうろちょろしてる。
だから会える機会が少ない。

そして、おっさんの気まぐれで会えない期間はバラバラだ。
1ヶ月も会えない時もあれば、2,3日後にはまた会う時もある。
「なるべくお前とは会いてぇけど海外行くとなると全然会えねぇんだよなぁ」と前会った時に零された。「あんた、ホントの職業なんなの?」って聞いたら「旅剣士って言わなかったか?」て返された。…海外でも剣道やってんの?

なんで付き合ってるんのかわかんねぇくらい接点も、会う機会もない俺らだけど、互いに互いが好きになっちまったから仕方ない。


『出かけてくる。今回は少し長くなりそう』
この前会って、朝起きたらこんな紙切れが置いてあった。
おっさんが俺のとこにいる期間も同じく気まぐれ。一週間いるときもあれば1日しかいないときもある。

この前は1日しか会えなかったし、それももう1ヶ月くらい前になるな…最悪だ…

ゾロが足りねぇ…


フラフラと家に帰る。
今さっき「テメェがいると店が湿っぽくなる」とジジイに店から追い出された。
おっさん不足で溜息ばかりついていたせいだ。

「ぞーろぉー…会いてぇよぉー…」

夜、道中でフラつきながらブツブツ何か言ってる姿は不審者以外の何者でもないがそんなこと気にしていられない。

なんなんだ、人のこと散々弄びやがって…俺だけが好きみてぇじゃねぇか髭マリモ…どこにいるんだ…

「おー今日は早いんだな」
「………ぅえっ」

頭ん中でゾロゾロ言ってたら本当にいた。あれ、俺そこまで頭おかしくなっちまった?

家の玄関の前に…

「…ゾロ?」
「悪りぃな、また外国に呼ばれてよぉ」
「……本物?」
「なぁーサンジ、早く部屋入れてくれ」
「……」
「……サンジ?」
「…ぞっ、ゾロぉぉぉ!!」

ゾロだ、ホントに目の前にゾロがいる!

嬉しくて周りのことなんざ考えず抱きつく。だって、ゾロがいる!

「うおっ、なんだサンジ、俺がいなくて寂しかったのかー?」
「すげぇ会いたかった!」
「ぶはっ、ガキだなぁお前!」
「うっせぇおっさん!そーいうテメェは俺に会いたくなかったのかよ!」
「ああ?会いたくてたまんなかったからお前ん家の前で待ってたんだろ?」

合鍵、いい加減よこしやがれ
そう続いたおっさんの言葉はもう聞こえてない。

「…ゾロぉぉぉお!!好きだぁぁぁ!!」
「うるせぇなぁ、近所迷惑になるからやめろよバカ」
「好きなもんは仕方ねぇだろ!」

何回言っても足りねぇくらいだ。
こんなおっさんにここまで骨抜きにされるなんて俺も大概イかれてる。
けど、好きになっちまったもんはしょうがねぇだろ?



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