可愛いケモノ達
「ゾーロー、もうそろそろおやつの時間だぞー?」
「クエーっ」
「んんん…まだ寝る……」
「ぐぇッ……うー…どうしようカルー…」
「クエェ……」
オレは今困っている。
そしてとても幸せだ。
メリー号の船尾。オレはゾロの抱き枕、カルーは枕として、ゾロと一緒に昼寝中。
今日もキッチンから甘くていい匂いがしてきたからもうそろそろおやつの時間だ。早く食べに行きたい。
でも、ゾロに苦しいぐらいに抱きしめられて行くに行けない状態だ。
カルーも同んなじような状況みたい。
どっちもゾロから離れればいいんだけど、ゾロの側で寝るのはとても気持ちがいいから離れられない。
「ゾロぉ……」
「んむ……んー…」
それに、こうやってゾロにギュッてされながら寝ることができるのはきっと船の中でオレだけのはずだ。
その嬉しさもあって余計離れることができない。
オレの毛に顔をうずながらすやすや眠るゾロはなんだか、戦ってるときと全然違くてドキドキする。なんだか、子供みたいで可愛い。
「ぞっ、ゾロ…おやつ食べられなくなっちゃうよ…」
早くしないとルフィにオレらの分まで食べられちゃう。
「クエ〜!」
「うん…」
「カルーも起きろって言ってるぞ!」
「…ん…おきる、から……」
「いや、寝てるじゃねぇかっ!」
「クエェー!」
「おら、マリモにトナカイに鳥ー、おやつ持ってきてやったぞ」
「あっ、サンジっ!」
「クエーッ!!」
焦っていたらサンジがわざわざおやつを持ってきてくれた!
「ゾロ、おやつが来たぞ!」
「クエッ、クエー!」
「いや俺が持ってきたんだけど!」
「んあ…さけ……?」
「「お・や・つだ!!」」
「クエエーっ!!」
「…あとで…くう……」
「…わわっ、ぞ、ゾロっ!?」
「……ぅぐっ…」
「クェッ…!」
オレの額に鼻をスリスリとするから、ゾロの唇がふにふに、鼻に当たる。
な、なんでこんなにドキドキするんだ!?ゾロはっ、人間だしっ、男だしっ、いつもはすげぇ怖いし!!
……でも、寝てるときの顔はすごく幼く見えるし、酒飲んでるときはよく笑ってて綺麗なんだよなぁ…
……あれっ、オレ、ゾロにこんなこと思ってたのか!?!?
オレ、おかしくなっちゃったのか!?
「ゾーローー!!おやつ食わねぇのかぁー!?オレがもらっちまうぞ!!」
「やるかアホキャップ…」
「んだよぉーくれねぇのかよぉ…あっ、じゃあチョッパーとカルーの…」
「ヤラネェヨ!!!」
「クエーーッ!!!」
「ルフィ…テメェおかわりならキッチンにあるっつったろ…」
「んー?全部食っちまった!にしし」
「じゃあそれで我慢しろ!」
「えーーっ!」
「えーっじゃねぇよクソゴム!」
ルフィの声でならすぐ起きるゾロは、ルフィがこちらを呼んだ途端目を覚ましてむくりと起き上がった。
その途端ゾロの腕から解放されて、息苦しさはなくなったけど、ゾロから離れて寂しくなった。
「ったく、やっと起きやがったかクソ剣士が。」
「ゾロ一緒に食べてもいいか?」
「クエッ」
「あ?ああ、構わねぇよ」
「じゃあ、けもの共は仲良く食ってろよ?」
くしゃりとゾロの頭を撫でてから、「ナミすわぁぁん!ドリンクのおかわりいるかなぁぁ?!」って言いながらサンジは船尾を離れてった。
「…って、俺もケモノ扱いかよっ!」
「いや遅ーよ」
「クエェー」
しかも頭撫でられことには無反応なのかよ!
「ったく、あのクソコック、俺をなんだと思ってんだ。」
「ケモノなんじゃないかなぁ」
「クエー」
「……斬るぞテメェら」
「じょっ、冗談だよ!!ほらっ、早く食べよ!?いただきまーす!」
「く、クエー!」
「…ふん。」
前言撤回だ、やっぱりゾロは怖い!!
……でも、おやつのドーナツを口いっぱいに頬張るゾロはちょっと可愛い。
うーん……ゾロって怖いのか可愛いのかわかんないや。
「あれ、ゾロまた寝るのか?」
「…ああ、さっきルフィに起こされちまったからな…。…夕飯まで寝る」
「そっか…じゃあ、オレも寝る!」
「クエ!」
「ん…好きに、しろ……」
「……もう寝ちゃった」
ドーナツ全部食べ終わったらすぐに寝ちゃうゾロはやっぱりケモノだ。
「……オレも眠くなってきた…」
「…クエぇ…」
さっきと同じようにゾロに抱き枕にされてオレも眠る。
ゾロの高めの体温はとても心地がよくて、すぐに深い眠りに入れる。
オレ、今とっても幸せだ!