夢の中で見たあなた




「………ッ!!…はっ、はぁッ………は、……ぞ、ろ…?!」
「…ん……?…ぁんだ、どした……?」
「……あ……あぁ、いや、悪りぃ…変な夢見ただけだ…」
「………だいじょぶ、か?」
「えっ、あ…おう……問題ねぇ」
「…ん、そか…」
「起こして悪かったな、まだ寝てて平気だぞ…おやすみ」
「ん…」

そう言うとすぐに眠りにつくゾロ。
月影に照らされた幼い寝顔にホッとする。確かめるみたいにその頬を撫でて、若草色のふわふわした髪も撫でる。



今日、上陸した島は海賊が支配しているところだった。しかし、その海賊のおかげで島の治安は守られているようで、活気に満ちた明るい島だった。

と言っても海賊は海賊。何か問題を起こすと俺らのような小さな海賊団はどうなるかわからない。
ナミさんがトラブルは絶っっっ対に起こさないでね!!とすごい剣幕で(主に船長に)注意した甲斐あって、何事も起きることなく、宿に無事、一味全員で泊まることができた。

今はもう、皆それぞれの部屋で寝ている。時刻は丑三つ時頃だろうか。



…怖いけど、綺麗な夢だった。

ゾロがたくさんの死骸の中で突っ立ていた。恐らく、全てゾロが殺したものが転がっていて、その返り血でゾロは全身がどす黒い紅で塗れていた。

通常なら恐ろしいと感じる筈だ。

けど、その真っ赤なゾロはまるで快感に溺れているかのように淫らだった。
ああ、こいつは血に酔っているんだ。としばらくして理解した。

だらしなく開いた口からは熱い吐息が漏れている。目は多くの水分を含んでいて今にも涙が出てきそう。時折唇を舐める赤い舌が酷くこちらを誘っているように見えた。

とにかく、何もかもがいやらしく見えるのだ。このゾロは。
俺は少し離れたところからその魔獣を見つめていた。

ああ、エロいなぁ。
ずっとそれだけを思っていた。

そしたら、ゾロがこちらを向く。
あの、とても潤んだ、全身浴びた血よりもずっとずっと、鮮やかで美しい緋色の瞳がこちらを見ていた。
それだけで俺は全身を快感に支配されたみたいだった。ゾクゾクとした痺れが身体の中心から爪先とか頭とかまで巡る。

それから、ニヤリと口角が上がる。
唾液でテラテラと光る薄い唇はたまらなく淫靡で…

『俺、このまま殺られちまうのか』
ああ、なんて嬉しい死に方なんだろう。
好きな奴に殺されるなんて寧ろ本望じゃねぇか。

夢なのに、本当のゾロはそんなことできないのに、俺は真面目に思った。

ジャリ、ぐしゃり、ぐちゃ。そんな音が混じったものと共にゾロが一歩こちらに歩み寄る。ゾロが持つ妖刀がギラリとした。
「ゾロ、おいで」
そう言ったところで目が覚めた。


一気に感覚が戻ってくる。
シーツの触感、少しだけ塩分を含んだ風、鈴虫の声、月の光
大きく息を吸い込んで、吐く。
ああ夢だったんだ。少し残念な気持ちになる。

ゾロが起きてしまった。
大丈夫か?なんて心配されて驚いた。夢の中で俺を殺そうとしたくせに。

もう一度、ゾロの頭を撫でる。
あの緋色の瞳が見たくなったけど、それではまたゾロを起こしてしまうから我慢した。


またあの夢が見れたらいいな
ゾロを抱きしめながら、そう思って俺は眠りについた。



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