青春とお弁当と時々笑顔




「サンジーそれくれよー」
「ああ?誰がやるか」
「サンジの飯いつも美味そうだからな!なーサンジー。くれよ!」
「美味そうじゃなくて美味いんだ。やらねぇって言ってんだろ!」

とある高校のとある教室のお昼休み。
サンジの弁当を奪おうとするルフィの光景はもはやお馴染みとなっている。
「くれ!」「やるかクソゴム!」このセリフの応酬は何度聞いたことだろうとクラスメイトは呆れ気味である。

サンジもコック見習いとして人に食べさせることは好きだ。しかし、ルフィに食わせるとなると自分の昼ごはんが無くなるので絶対に食べさせない。

弁当を作ればよいのではと思うのだが、例え作ったとしても自分の分まで狙われてしまうのがオチなのだ。

それに今、ルフィの目の前には母親が朝早くから作ってくれた弁当がある。
花見でもするのかと聞きたくなるような重箱にぎっしり詰まったたくさんのご飯におかず。
それらがあってもなおサンジの弁当を狙うので、皆ルフィの胃袋はブラックホールかと突っ込んでいる。


「おいグルグル、俺にも寄越せ」
「んのっ…現れやがったなクソマリモ!テメェにもやる飯はねぇんだよ!!」

次にサンジの飯を食べに来たのはゾロだ。サンジの空いた前の席にドカッと座って偉そうに言う。
ルフィほどではないがこの男の食欲も凄まじい。

「お前、弁当は」
「3時間目の前に全部食った。」
「学食行ってこい」
「あそこはまずい」
「マリモが贅沢言ってんじゃねぇ!」

この学校、学食があるのだがゾロの言う通り、あまり味はよくない。その代わり値段は破格の安値である。
ちなみにルフィは始めて学食を利用したその日から使用禁止である。理由は言うまでもない。

「もーすぐ部活で時間ねぇんだ」
「だったらさっさと行け!」

ゾロは剣道部に所属しており、昼休みにも剣道場に自主練習をしに行く。
朝、昼休み、放課後、夜。1日の殆どを剣道ち費やす剣道バカである。

前のゾロ、隣のルフィ2人から弁当を死守するこの時間はサンジにとってなかなかのストレスである。

「この唐揚げだけでいいからさ」
「………1つだけだぞ」
「あー!ゾロずりぃ!」
「俺はお前と違って全部食うわけじゃねぇんだよ、ルフィ」
「サンジ!俺にも唐揚げ1個くれ!」
「テメェは1個ですまねぇからやらねぇんだ!!」

しかし、サンジはゾロにすぐ折れてしまう。ルフィと違い、ゾロは弁当全てを食べるような奴ではないので渋々と言った感じだ。

「じゃー1個もらうぞ」
「明日はないと思え剣道バカ」

このセリフもお馴染みだ。

「やっぱお前の作るもんはうめーな」
「…そりゃどーも」

明らかに嫌味っぽく言うサンジだが、内心そうでもない。

サンジは学校でも有名なフェミニストである。「俺はレディの為に生まれ、生きる男だ!」と真顔で豪語するほどの。
だがこのフェミニスト、何故か目の前の剣道バカに惚れている。

いつもは唐変木でムスッとしてるくせに時折見せる笑顔にやられたらしい。
絶賛片思い中で常にゾロに突っかかってはしょっちゅう喧嘩をしている。好きな子にイタズラしちゃう男子のソレだ。

だから、ルフィには絶対あげない昼飯もゾロにはあげてしまうのだ。

その上、この男やたら女子にモテる。サンジから見れば無愛想なことこの上ないが、女子から見れば「チャラチャラしてなくてクールで素敵v」らしい。
それでよくゾロは女子から弁当を渡される。しっかりと完食はするのだがその度にサンジに「やっぱお前の飯のが美味い」と殺し文句を言ってくるのである。

好きなヤツにそんなこと言われて自分の作った飯をやらない奴なんていないはずだ。

『ああ、クソ…俺は何故こんな野郎に惚れたんだ…』
いつもサンジはこう胸の中で思う。

「おーいゾロ!行かねぇのか!」
「今行く!」
「ゾロはホント剣道バカだなー!」
「うるせぇよ!おいサンジ」
「あ?んだよ」
「今日も美味かった。ありがとな」
「…おう」

ふわりと笑うゾロの綺麗な笑顔。
たまにしか見せないゾロの笑顔がサンジだけに向けられる。この瞬間があるからサンジはゾロに今日もおかずをあげるのである。












乙女サンジを目指してみました!
タイトルセンスは無いです…



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