静雄はチッと舌打ちをして、自分に押し倒されている臨也を見た。確かに押し倒している、更にしっかりと挿入済みである。しかし先程まで体をしならせて自分の下で喘いでいた臨也の姿はもうどこにもない。というのも、挿入してから臨也が一度目の射精をしたあたりで電話がかかってきたのだ。ちょっと真剣な仕事の話だから大人しくしていろと言われ、臨也は「んんっ」と喘ぎながら自らうつ伏せになり静雄に背を向けた。
さて、臨也が電話を始めて一体何分経っただろうか。静雄は基本的には優しい性格をしている。けれどだからといって気は長い方じゃない。寧ろ短い方だ。静雄が人間の三大欲求のうちのひとつ、性欲を、餌を目の前にしてどこまで我慢できるだろうか。

「はい、はい、ではそれで……!?」

もう限界であった。静雄はゆっくりと腰を後に引き始めると同時に臨也の体がぶるりと震えた。何をするつもりだと臨也が視線だけを静雄に向ける。静雄は口角をあげて言った。

「そろそろ限界だから動かせてもらうぜ……臨也くんよぉ」
「あっ、っ」

引いた腰をそのまま勢いよく打ち付ける。ぱちゅんと肉のぶつかり合う音とともに臨也の口から声が漏れて、臨也は咄嗟にこちらの声が聞こえないよう電話を握りしめた。

「おい、ふざけんな……!」

小声で臨也の声が聞こえたが、そんなものお構いなしだ。静雄は逃げる臨也の腰を捕まえると、先程までの我慢をすべて発散するように腰を打ち付けた。

「んひっ、ん、んっ」

前立腺を抉られるような感覚に襲われ、体が快感に支配される。いくら口を閉ざそうとしても臨也の口からは喘ぎ声がこぼれていた。体中が快感に支配され始めようとしていたその時、臨也は電話越しに聞こえる声に呼び戻される。

『折原さん?』
「っ!?」

そうだった、今電話中なのだった。臨也は血が出そうなほどに唇を噛んで、暫くの後口を開いた。

「っあ、ん、すみませ、ん……」

全身を駆け巡る快感は、やはり耐えられそうにない。

「また、ごじ、後日っ……かけなおし、んあっ……かけなおし、ます」

臨也はそう言うと、相手の話を聞かずに一方的に通話を切った。

「シズ、ちゃっ……さいってい……!」
「ほったらかしにする方が悪いんじゃねえの」
「ひあっ、あ、も、」

シーツに押し付けられた臨也の顔は、涙と涎で濡れていた。

「電話してるとき、すっげー締まってた」
「そういうこと、言うなって……へんた、あああ、」
「変態はどっちだよ。喘ぎ声聞かれて興奮してたんじゃねえの? 臨也くんはよ」
「ちが、うって」

だらだらと先走りを垂らしていた臨也のペニスをきゅっと握ると、臨也はそれだけで背中を逸らして欲を吐き出した。それでも静雄は絶頂を迎えた後の臨也を容赦なく攻め立てると、臨也の体はびくびくと反応する。

「あ、も、イった、からぁ……」

逃げたくても腰を捕えられている臨也が逃げられるはずがない。静雄は臨也の背中にちゅ、とキスを落として言った。

「俺が満足するまで離してやんねえよ、臨也」

その瞬間きゅ、と締まった臨也の中に、静雄も欲を吐き出した。




下半身の反逆

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