※現代学パロ
※シリーズとはまた別設定です



その日、清光のクラスメイトである皆は目を疑った。

「ん、ちゅ」

清光は誰かと寄り添い歩きながら教室までやってきた。そして、クラスが違うのであろうその人物と別れ際、ドアの前でいきなり2人はキスをした。

「へへっ、可愛いなあお前は」
「当たり前でしょ。じゃあまたお昼にね」
「おう」

そして何事もなかったように清光は教室に入ってきた。廊下側の窓ガラス越しに清光と別れた人物の姿が見える。黒い学ランによく映える金の髪をなびかせながら、その人物はちらりと教室の中に視線を送り、清光と目が合ったのかにかりと笑った。清光はというと、ピンク色のオーラを身に纏って可愛らしく手を振っていた。

「……清光」
「なに」

安定が自分の前の席に座った清光に話しかける。すると清光は先程聞こえた声のトーンより少し低い声で答えた。

「いつから」
「昨日」
「なんで」
「かっこよかったから」
「それだけ?」
「俺のこと可愛いって言ってくれる」
「……あそ」

清光は後ろを振り返りもせず、淡々と安定からの問いに答えていた。安定もそれについて特に文句を言うことはしない。ただひとつ、ひとつだけは言わせてくれと清光の肩を掴んで無理矢理こちらを向かせた。

「なに」

不機嫌そうに清光が言う。先程までのピンク色オーラはどうした。安定は心の中でツッコミを入れた。

「教室の前でキスとかしないでくれるかな」
「なんで」
「迷惑」
「見なきゃいいでしょ」
「見えちゃうでしょ」

じとり、お互いを睨みつける。安定は心の中でため息をついた。清光の恋愛は分かりやすい。好きな人には自分を好きになってもらえるようにとことん尽くすし、周りの人間からの目や評価もまったく気にならなくなるのだ。だから人前であろうとべったりくっついているし、好きな人の前ではこの人が好きになってくれた可愛い加州清光を崩さない。だがしかしそれが壊れるとひどいものだ。結局清光の世話をするのは自分なのだから、清光にはもう少しなんとかなってほしい、と思う。

「あんまり人前でべったりしすぎるのもはしたないでしょ。別れたときすぐ分かる」
「……別れないし」
「その台詞何回目」
「お前には関係ないし」
「どの口がそれを言ってるのかな」

ムスっと清光が視線を逸らす。清光だって安定が言っていることを分かってはいるのだ。

「でも」
「でも?」

清光が視線を安定に戻す。

「俺の彼氏、皆かっこいいから見せつけとかないととられちゃうでしょ」

あれはこの人が俺の彼氏だから取らないでねという牽制だったのか。てっきり自分のやりたいように行動しているだけなのかと思っていたが、どうやら違うらしい。だからといって、あのような行動をやめてほしいという気持ちに代わりはないが。

「……ああ、そう」

安定はそう答えるしかなかった。


彼氏公言

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