土方は一人でラブホテルに来ていた。男1人でラブホテルだ。特に連れはいない。

「……っくそ」

土方も好きでこの場所に来たわけではなかった。だが、ここでしかできないような気がしたのだ。数日前、土方は自分の体の変化に気付いた。





元々土方は性について淡白なほうだ。血を見た後は高揚した気分のまま風俗に行って女を抱いたり、自分で慰めたりはする。けれど自分の中で溜まってる、と考えたことはなかった。今日だって特に何があったわけでもない、書類を整理して、見回りを行って、たまたま運悪く銀時に会ってしまった。それだけだったのだが。

(――――なんで)

眠気を感じて瞼を閉じると、脳裏に浮かぶのは銀時の姿だった。しかも普段の気の抜けた顔ではない。余裕が無さそうに唇を噛みしめながら自分を見下ろして言うのだ。「ひじかた、」と。こんな姿に見覚えはない。自分の想像だとしたら気持ちが悪い。そう思って、ふと気付いた。土方は確かに見たのだけれど、覚えていない銀時の姿がある。まさか、と思った。見たことのない顔、熱のこもった吐息、ぎらりと雄の欲望を宿した瞳に焼かれるようだ。土方は耐えきれなくなって瞼を開いた。そして違和感に気付く。

「嘘だろ……」

土方の性器は反応していた。まさか、夢で見たあの姿に興奮したのか。土方は落ち込み、けれど焼き付いて離れない銀時の姿にどうしようもなくなりそれに手を伸ばす。いつものように、ただ精を吐き出すだけ。

「っく」

瞼を閉じるとすぐに先程の銀時の姿が浮かんで、それを振り払おうと必死に手を動かす。そうし始めて何分か経った。いつもならとっくに射精の兆しを見せている頃なのに、今日はどうもうまくいかない。結局その日、土方は諦めてそのまま寝ることにした。あれだけ気持ち悪くて仕方がなかった、自分のお尻の穴から垂れる他人の精液のあの感覚。それを思い出してしまいずくりとそこが疼いたような気がしたが、気のせいだと無視をした。
その日から何度か、土方は銀時の姿を見ては自分の性器を扱くようになった。けれど一度も射精に達したことはない。これだけなにも吐き出さずにいるとなんだかおかしくなりそうだった。そして今まで無視していたあの疼きを確かめようと思ったのだ。
こうして土方は誰に悟られてもおかしくない屯所ではなく、わざわざラブホテルにやってきたのである。

いつものように性器を取り出し、扱く。予想はしていたがやはり刺激が足りない。土方は用意してきたローションを指に絡め、そろそろと後ろに指を伸ばした。記憶の中では排泄にしか使ったことがなかったそこにつぷりと指を挿れる。相当な違和感を感じたが、夢の中で自分はここにもっとすごいものをぶちこまれていたのだ。きつくて狭いこんなところに、よくあんなものが入ったな。土方はナカを広げるように指を進めていく。どうしてこんな情けないことをしなければいけないのか、考え始めると悲しくなるので思考は放棄した。萎えそうになる性器を片手で扱き、もう片方は未知の領域に進む。そろそろ大丈夫かと2本目の指を挿れようとしたところで、びりっと体に電流が走った。ずくりと体が疼く。自分の体はこの感覚を知っている。おそるおそるもう一本指を挿れ、先程の場所を探す。案外簡単に見つかったそこを指で擦れば、びくびくと体がしなった。

「ぁあ、っは」

萎えそうになっていた性器が段々硬度を持ち始める。もう何日も味わっていなかった快感を、土方は夢中になって貪った。ぎゅっと瞼を閉じると浮かんでくるのは記憶にはない銀時の顔だ。

(ひじかた、きもちい?)

ひじかた、と自分を呼ぶ唇から、はぁ、と熱のこもった吐息を漏らす。ぎらぎらと欲望を宿した瞳が土方を捕らえる。再び犯されているようだった。土方は夢の中の銀時の腰使いに合わせて指を動かす。前の快感も後ろの快感も逃すことなく拾っていた。この感覚は久しぶりだった。

(俺無しじゃイけなくなるようにしてあげる)

びくり、と一層土方の体がしなる。漏れそうになる声は喉の奥で殺した。

「……まじ、か」

まさか、もう前だけでは物足りなくてイけない体になってしまったなんて言えるわけがない。こんな体にしたやつに責任を取ってもらうなんて無理だ。というか、これを告白することは自分のプライドが許さない。女を抱いてもイけるかどうか分からないこの体で風俗なんて行けない。今後一生、こうして自分を慰めないといけないという事実に土方は絶望した。


勘弁してくれよ、神様

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