清光は、仕事が終わると主の部屋へ行くことが多かった。主に呼ばれていたらすぐに行くし、呼ばれていなくても与えられた使用人たちの部屋で過ごしていると不思議がられるほどにはかなりの頻度で行っていた。

「清光は今日も主のところ?」

安定が何やら紙束を持って鳴狐に問う。鳴狐がこくりと無言で頷くと、安定はため息をひとつ吐いて部屋を出ていく。

「ああっ、今日は行かないほうが……」

お供の狐がそう言うより早く、安定は主の部屋の方へ走っていってしまったようだ。

「清光にも困ったものだな。主も大概だけど」

虎徹の言葉に皆が同意した。





主の部屋の前で足を止めて、ノックをする。どうぞ、と声が聞こえたと同時に清光はドアを開けて部屋に足を踏み入れた。

「すみませんね清光」
「いいよ。主の力になれるなら」

主は読んでいた本を閉じると、椅子から立ち上がりベッドにうつ伏せになる。

「保健医なんてやっているのに、まさか私が腰を痛めてしまうとは」
「藤四郎たちと一緒にはしゃいで遊ぶからだよ。薬研が気を付けろって言ってたのに」
「やきもちやきましたか?」
「冗談」

清光は主の背に跨って、指示される通りに刺激していく。痛いのか気持ちがいいのか分からない声を出す主を気遣って手を止めては顔色を伺い、大丈夫だと言われると再び開始する。その繰り返しが20分くらい続いただろうか。主はありがとうございますとベッドに座った。

「もういいの?」
「はい。おかげで少し楽になった気がしますよ。ありがとう」
「どういたしまして」

主はにこりと笑って清光もベッドにうつ伏せになるよう指で示す。

「……俺も?」
「お礼ですよ。さ、どうぞ」

清光は先程主がしていたようにうつ伏せる。主は清光の背に乗って腰のマッサージを開始したが、暫くすると清光の背から降りてしまう。

「もう終わり?」
「いいえ、ここからです」

主は清光に膝を立てるように指示した。清光は情事の際にたまにする格好だなとは思ったものの、マッサージの続きだと信じて疑わずに言われたとおりに膝をたてる。

「これで、いい?」
「はい。このままで」

そう言うと、主は指を清光のお尻の割れ目にすすっと這わせた。思いもよらぬ刺激に清光は一瞬体を跳ねさせる。

「あ、主……?」
「おや、ここですか」

ぐりぐりと布越しに蕾を刺激されて、清光はやっと主が何をしようとしているのか理解したようだ。

「主、今日はちがうって……!」
「違いますよ、これはマッサージですから」
「ううっ」

口ではなんとか言いながらも、清光は決して抵抗しようとしない。主はそれをいいことに清光のズボンに手をかけると、そのまま一気に下着ごとずりおろした。突然外気に触れた性器がふるりと震える。

「あるじ……」

何やら主はごそごそとベッドの下を漁り、お目当てのものを見つけるとそれを手に馴染ませた。

「冷たいですよ」

ローションを纏った指が、何の準備もしていないそこにゆっくりと挿入されていく。

「っあ」
「相当こっていますね……入念に解さないと」
「主、なんか、変態みたい……!」
「マッサージだというのに感じているあなたは変態じゃないんですか?」

ぴん、と硬度を持ち始めている性器を弾かれる。清光の体はそれすらも快感として捕えたようだ。

「っんん、ん」
「ぐちゅぐちゅ言ってるの聞こえますか? やらしいですねえ清光」
「それ、はっ!」

もう弄び慣れた清光のナカを、主の長い指が暴き立てる。前立腺の場所も既に把握しているので、物足りなさそうに清光が自分で腰を振ってきた後にしっかりと刺激してやる。

「っあるじ、前、まえ、さわって」
「そこはマッサージの必要がないですよ」
「いじわる……!」
「自分でどうぞ、清光」

清光はそろりと指を自分の性器に伸ばす。

「マッサージされながら自慰するなんて、恥ずかしい子ですね」

顔を真っ赤にしながら羞恥心の残る指で性器を扱く。始めこそその動きは控えめだったものの、快感が高まるにつれそれも薄れていったのだろう。性器を擦る指は激しく上下していた。

「っは、ああ、んっ……も、う」

びくりと清光の体が一際大きく跳ねる。シーツに白濁液を飛ばして、清光は体の力を抜いてぐったりとした。

「マッサージ、気持ちよかったですか?」
「ん……うん。ありがと、主」
「それは良かった」

主が汗で額に張り付いた清光の髪をかきあげ、露わになった額に唇を落とす。清光がへらりと笑って、もう一度とキスをねだったその時だった。

「はいりまーす」

ドア越しに声が聞こえたと同時に部屋のドアが開かれる。現れたのは紙束を持った安定だった。安定はベッドの上の2人を見て、もう何度見たか分からない光景に深いため息をこぼす。

「主は服着て、清光は下だけ何もはいてない。変わった趣味ですね」
「……今日はマッサージしてもらいたくて呼んだだけですよ」
「なんで清光は脱いでるわけ?」
「マッサージに必要だったので」
「つまりは事後、と」

安定はささっと布団にくるまり下半身を隠した清光の目の前で、持っていた紙束をばさりと落とした。

「これ、今日君が学校に忘れてきた宿題。偶然見つけちゃったから折角持ってきてあげたのに」
「……どうも」
「3倍返しでよろしく」

安定はそれだけ言うとすぐに主の部屋から出ていく。主と清光はお互い目を合わせて、怒らせちゃったねと笑った。


明らかに事後ですよね?

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