情報が欲しいのだと言った音也衛門の言葉は本当のようだった。音也衛門とあのとき共に城を襲ったセシル丸という男は現在怪我の治療中らしく、音也衛門は普段ほとんどトキヤと共に自室にいる。暇を潰すために話をしていると、最初はただの世間話であるのに途中から自然に真影のことや翔ノ助のこと、早乙女流の忍についての話題に切り替わっていたりするのだ。トキヤも最初の内は話に応じていたものの、音也衛門のペースにハマると何か喋ってしまいそうだと感じて口数を減らした。
にも関わらず、音也衛門はトキヤに話しかけ続ける。

「ねえねえトキヤってば」
「……」

トキヤは部屋の隅で座っていた。

「トキヤ!」
「……」

ちらりと目線だけでなんですかと訴えると、音也衛門はトキヤの瞳をじっと見つめてくる。あまりにも見つめられるものだからなんだか居心地が悪くて、トキヤはふいと目を逸らした。

「あ、トキヤ今目逸らしたでしょ」

それがなんだと言うのだ。距離を縮めてくる音也衛門から遠ざかろうと、拘束されている足と手を器用に使って動く。

「トキヤって頭いいから、俺が情報喋らせようとするとすぐはぐらかすんだよね」
「……私は何も喋りませんよ」

トキヤがそう言うと、やっと喋ってくれた!と音也衛門は笑った。

「うん、だから交換条件。俺も、自分たちのこと話すよ」

は? とトキヤは音也衛門から逃げるのをやめた。自分たちの情報を与えるとは、またこの男は変なことを考えるものだと思った。けれど、トキヤは一応ここから逃げるつもりはないと言っている。彼らの情報を手に入れたところで、ここから出られない以上それを伝えることもできやしない。それを理解したうえでこの取引を持ちかけているのなら、トキヤにそれが気付かれないとでも思っているのか。

「だから、私にも知っていることを話せと…?」
「うん。ね、お互いのことも知れるし、一歩近付けるような気がするよね」

情報も聞けてトキヤのことも知れる、一石二鳥とはこのことだ、と嬉しそうに音也衛門は言う。トキヤの中でどう対応するかなんて、決まっていた。

「分かりました。いいですよ」

音也衛門の好意を利用する。それしかトキヤの頭にはない。頭ではそう分かっているし、行動にも移せる。けれど、この心に時折はしる痛みが気になる。考えてはいけないと脳が叫んでいるので考えはしない。トキヤ自身も、気付いたら終わりだとなんとなく分かっていた。本気で人に求められたのは初めてだから、きっと罪悪感を感じているのだ。それしか、ない。
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