六畳の部屋で暇つぶしにもくもくと寝転がりながら考える。いつものこと。エアコンもない部屋の温度は34度になり、どこからともなく侵入してきた蚊はわたしの身体の至る所から血液を抜き取る。如何に崇高な精神を持ったお坊さんといえども、人生で一度くらいはこの蚊を潰しているだろうな。掻きすぎた左手は血が出てきてバンドエードを貼ってる。昔から血を見るのが好きじゃなくて赤いものもあまり好きじゃない。だけど何故か金魚とストロベリージャムだけは好き。この部屋の同居人である小さな金魚の『彼女』はこの暑さで相当参っているのだろうか、元気がなくて喋りかけてもこっちを見てくれない。こうも暑いと水の中にいても駄目なのか。まるでジャングルの中のオアシスって訳じゃないんだな。ここが今アラスカみたいな気温だったらいいのにな。それだったら寒すぎるのか。わからないよ。喋ってよ、金魚。一方的に金魚に話しかけるけどもちろん返事はない。生まれて初めて金魚の気持ちがわかる感覚が欲しいと感じたけどそんな感覚あるのかも知らないし、持ってる奴なんているんだろうか。まあいないだろうけど。とりあえず水を入れ替えてる間にどうでもいい考えごと古い水と一緒に流れて消えた。時計はもう夕暮れを指して窓の外からは騒がしくランドセルを揺らす小学生たち。走りながらミライを宣言しあってる。いつものこと。わたしは?
おもむろに立ち上がって近くに転がってる糸がほつれたシュシュで髪を結び金魚鉢両手に飛び出す。この狭い世界には飽きたし、彼女がなくなってしまう。何処か別のとこに行かなきゃ。わたしが暇つぶししなくていいようなくらい虜にさせてくれる世界。