さよなら平凡
『んー…』
「レイ?どうした?」
『あのねー』
机の上に置かれたベルを指差して、これ持っていったほうがいいのかな、と言った。
価値のあるものだって聞いていたし、こういうのは肌身離さず持っていたほうがいいのかな。
「そうだなー…。でも見たところ、役に立ちそうもないし…」
『じゃあ、お留守番してて貰おうかな』
光に反射してキラキラと光るベルに、いってきます、と呟いた。
*
「よし、着いたぞ。ここだっ!」
「えっ!?」
目の前には、この前見た、不思議な色をした入口のある大きな建築物だった。
「家から近いじゃないか!!」
「遠いとは言ってないだろ」
『死人の出しそうな建物に見えないけど…』
もっと、暗い所にある不気味なものを想像してた。
「ここが"死への階段"か…」
「死への?」
『どういうこと?』
「なんせ10年間で約1万人が登ったっきり死んだ階段だからな。登ったら二度と降りられない階段ってわけだ。まあ、俺たちには大丈夫だけどな!」
ハハハ、と笑うアリババ。
しかし、すぐに冷や汗をかいて顔色が悪くなった。
「(…大丈夫…だよな?)」
『アリババ?』
「(あれ…大丈夫なんだっけ俺…)」
何やら様子のおかしいアリババ。
話しかけても全然反応しない。
考え込んでいたアリババの目は、次はアラジンを見て何やら考えているみたいだ。
『ちょっと、大丈夫?』
肩を掴もうとすると、いきなりビクリとした。
『なに!?』
「なんだテメーッ!!」
どうやらアラジンが何かをしたらしい。
でも、そのおかげで元に戻ったみたいでよかった。
「大丈夫!怖がらないでよアリババくん!これは"し"への階段なんかじゃないよ…。君の夢へと、つながる道だよ!」
アラジンの言葉を聞いて、顔が明るくなった。
「よーし、行くぞっっ!!」
『え、』
荷物を私に放って勢いよくアリババとアラジンは階段を登り出した。
しかし、登ったと思ったらまた勢いよく降りてきた。
「なんで戻るの!!?」
「すぐ行くとは言ってないだろ!バーカ、"迷宮攻略"は準備が大事なんだよ。まずは、買い出しに行こうぜ!」
「えー…」
『あ、ちょっと…! こんなに荷物持てないよ!』