しばらくの間、私は星を見ることはなかった。
朔がこの家に夕刻からよく来るようになり、私を外に出さなくなったからだ。しかし、私は急にあの星を見たくなった。最近、見なくても何も感じなかったのに。
「どうしても行くのか」
『…ん』
「…今日で本当に最後だぞ」
すぐに帰るように、と言うと朔は私とは反対の方向を向いて、口を閉ざした。
『なるべく早めに帰ってくるから。…ごめんね』
「……」
朔はピクリと肩を揺らすと、慌ててこちらを向こうとしたが、その顔を見る前に私は家の戸を閉めた。
『…寒…』
いつも見ていた場所に来ると、またそれらが飛びまわっていた。やはり、多い。
空を見上げると、あの星はあった。
『あれ…』
でも何だか、様子が違う。
『光ってる…』
しかしその光は光ったり、消えたりを繰り返していた。まるで、蛍のように。
『どうして、』
その時、一瞬目の前がくらりとしたかと思うと、胸に冷たいものを感じた気がした。
『な、に?今の…』
冷たいものを一気にたくさん吸い込んだような…。
そして、足から力が抜けていくのがわかった。
『力が入らな…!』
そしてそのまま身体にも力が入らなくなり、私は倒れてしまった。瞼が重くなってくる。
『朔…』
目を閉じる最後に見た空にあの星は、もうなかった。