泣きじゃくって殴ってみせろ




『祐希…?』

休み時間が始まり、机に伏せる祐希の前の椅子に座って名前を呼んでみたが、反応がない。

『祐希?…本気で寝てる?』
「……」
『ちょっと…』

肩をポンポン、と優しく叩いてみる。が、反応がない。
はあ、と溜息をつき席を立って里奈を含めた友達の席へ行った。





『……』

勘違いではなかったらしい。
何かおかしいと思っていた。昨日の朝だって、挨拶を交わそうとしても返事がない。休み時間には寝ていて反応もないし。

『(…これは……無視)』

今日も休み時間に席へ来てみれば寝てる。いや、これは寝たふりだ。絶対。だって、おかしい。

『なにか悪いことした?』

伏せる頭をつんつんと突いてみるがまた、反応はなし。
それを続けてみたり、揺すってみたり。起きてるでしょ、絶対。というより、寝てたとしてももう起きてるよね。

『……』

少しイライラとしてきたわたしはもういい、と言い放ち教室を出て行った。思ったより大きな声を出してしまったわたしは、周りの視線が痛い。
後ろで友達がどうしたの、と叫ぶ声が聞こえたが、聞こえなかったフリをした。

『…なんなの…!』





「祐希、さっき聞いたよ。愛と喧嘩したって」
「……別に」
「誰のモノマネしてるの。祐希様ですか」

こら、とわざわざ短い休み時間に教室に来て事情聴取する悠太。
いつものように机に伏せていると肩を揺する振動を感じ、また愛か、と思えば悠太の声で。

「どうせ、無視してるんでしょ」

だめだよ、せっかくの友情を壊しちゃ、と分かって言うからタチが悪い。

「この前言ってたでしょ。愛の様子がおかしい理由。ちゃんと話聞いてあげなよ」

祐希の気持ちも分かるけど、と付け足される。
確かに愛は何も悪くない。悪いのは自分で、オレが勝手にこの前の男は誰だとか、そういう事を思ってやったことだった。
愛が要の言葉に傷ついていることは薄々気付いて、七夕の夜、確信した。あの日から様子がおかしかったから。
愛は昔から隠し事が下手だ。
あの言葉に傷付いたことを隠そうとしてたみたいだけど、願い事を書いてあげた後の知ってたんだ、の一言で分かった。
あの後、愛をよく見てようと決めたはずだったのに。







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