真夜中を渡る星
「あ、いた!」
『えーと…橘くん?』
「え?あー、俺の事は千鶴でいいって!あいちゃん!」
『あ、うん…』
それより、やっぱ俺の事覚えてくれてたんだー、と抱きつく勢いで言う千鶴くんにう、うん、と返事をしながら少し後ろに下がった。
『で?どうしたの?』
廊下の壁により、通行人の邪魔にならないようにしてから話を戻した。
「あ、あいちゃんも今日の夜、公園に来ないかなーって」
ほら今日七夕だし!と目を光らせる千鶴くんに、ああ、天の川ね、と心の中で納得した。
『もしかして祐希達と一緒?』
「そうそう!あ、詳しくはあとでゆっきーに聞いてー!」
『ゆっきー…?あ、うん。わかった』
わたしが頷くと、よろしく、と千鶴くんは走って行った。
「あ、愛、今日…」
『…噂をすれば祐希だ』
昨日のこともあってわたしは気まずいけど、祐希は何とも思ってないらしく、普通に話しかけてきた。
そして話しかけてきた内容に覚えがあるので、うん、知ってるよと返す。
「え、悠太から聞いたの?」
『え?んーん、千鶴くんから…』
「は?千鶴?」
祐希は無表情を少し崩すと、あいつ、と呟いた。
『皆で星でも見るの?』
「んーそうじゃない?七夕だからって言ってたし」
『でも公園からは見えるかな…。電灯とかあるし』
「千鶴って七夕知ってたんだ。外国居たのに」
そこまで言い合うと、祐希とわたしは目を合わせる。
『なんか嫌な予感が…』
「うん。千鶴のことだし」
『あ、じゃあ何時に公園?』
話がずれたことを思い出し言うと、祐希は迎えに行く、と言った。
『え、いいよ』
「俺が迎えに行くまで絶対外に出ないでよ」
あと、帰り遅くなるかもだから、と言う祐希に笑ってわかった、と言った。
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