色めく灰
『えっ!祐希達が喧嘩!?』
空き教室で友達とお弁当を食べようとすると、友達が衝撃的なことを言い出した。
「なんか、さっきの休憩時間に女子が見たって」
絡まれてたのは橘くんみたいだけどね、と付け足しを聞き、祐希と悠太ではなかったことに、橘くんには悪いけど少し安心した。
「しかもベタに校舎裏でだってさ」
男は何考えてんのかわかんないね、と溜息を付く友達の顔を見た。
「ま、私の彼氏は…」
『あーはいはい。で?何で呼びだされたの?』
友達は私の顔をジッと見てから、あー、と話し出す。
「橘くん、浅羽くん達をダシに女子と話してんでしょ?その女子が先輩の彼女だったみたいでさ。ま、嫉妬よ」
私もされたいわー、とまた話がずれそうになったので、なんで祐希と悠太が?と聞いた。
「それは知らない。偶然じゃない?」
『偶然かー…』
祐希は面倒なことにわざわざ突っ込むタイプじゃないしなー…。
橘くんのことも覚えてないって言うし…。
『友達にでもなったのかな』
「それより愛、そんなペースで食べてたら予鈴鳴るよ」
カチャカチャとお弁当を片付ける友達に、え、早!?と叫ぶと急いでお弁当を食べ始めた。
「で?」
『え?』
お弁当を片付け、購買で買ってきたジュースを飲もうとすると、いつもと違う真剣な顔をした友達がいた。
『な、何?どうしたの』
「どうしたじゃないでしょ?最近、私と食べるようになったのはなんで?」
あ、私は愛と食べられて嬉しいけどさ、と笑って付け加えた。
『えーと…』
「あそこと喧嘩でもしたの?」
浅羽くん達はないとして、ほら、あの塚原くん?とかさ、と聞いてくる。
『喧嘩ってわけじゃないけど…。なんていうか、男子の中に女子1人って周りにどう思われるかな、とか思うし。…それに…』
「それに?」
『それ、に…』
そこで前に、トイレで要が言っていたことを思い出してしまった。
じわりと視界が涙で滲んでくる。
『う、』
「きゃー!愛!?泣いちゃった!?どうしよ!」
飴、飴食べる!?あ、お菓子!私購買でお菓子買ってくるから!と走り出そうとした友達に、大丈夫、と震えた声で止めた。
「そ、そう?」
友達はホッと息を吐き、向かいの椅子に座った。
「塚原に泣かされたの?」
飴を貰い口の中に入れた。美味しい?と聞いてくるのでこくりと頷くと、ホッとため息をつかれた。
さっきの言葉にもう"くん"がついてないことを思うと、同じ学年の子から随分下に格下げされたな、と思ってしまった。
『どっちかと言えば、そう…なのかな』
「…よし、放課後、呼び出してやる」
『え、それはちょっと…』
私があの事聞いてたのバレちゃうし、人に話した事もバレてしまう。
それに、
『一応、幼なじみだし…』
「…ま、わかった」
幼なじみだから許すけど、これからもなんか言われたら言ってよ?と笑う友達に、うん、と笑って言った。
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