記憶の中の黄色




『おはよ、眠そうだね』

自分の席に鞄を置いてから、祐希の元へ来た。

「うん」
『また遅い時間までゲームしてたの?』

ふふ、と笑うと祐希はふわー、と眠そうに欠伸をした。

「そういえばなんで今日早かったの?」
『ああ、今日提出のワーク。早めに来てやりたかったから』

祐希やった?、と聞くと祐希は眠そうにやってない、と言った。
…この子はまた提出物出してないのか。

『あ、そうそう。噂なんだけど、今日転校生来るらしいよ』
「転校生?」
『男子なんだって。仲良くなれたらいいね』

笑っていうと、祐希は少しムスリとした表情になった。

「はーい、席についてー。今日は転校生がいるからねー」

前の扉を空け、担任の先生が入ってきた。
皆はやっぱり?、などとザワザワしながら席に戻った。

「橘千鶴です。よろしくお願いしまーす」

転校生は明るい髪で、ピアスもあけている。
半袖のカッターシャツはボタンをとめないで、その下には長袖のTシャツを着ていた。

『(あれ、あの子…)』

あの公園の男の子に似てるような…。

「すごいよねー、あの金髪」

前の席の子が話しかけてきた。

『不良?』
「なんかハーフらしいよ」
『へー、ハーフなんだ…』
「にしては背ちっさいよね」

あはは、と前の子が笑った。
わたしもそれに少し笑ってしまった。

橘くんを見ると、席は窓から2番目の後ろ。
祐希の席の隣に座った。

「あ、こちらさんもよろしくー」
「…どうも」

祐希は素っ気なく言った。
それに苦笑していると、前の子が、浅羽くんの隣いいなー、と羨ましそうに言った。

「じゃ、出席とるわよー。青戸ー」

担任が出席をとる間も、周りは橘くんのことでザワザワしていた。

「あーっっ!!!」

それに負けないくらいの大声が教室に響いた。
声の主は転校生の橘くん。
皆なんだなんだ、と見ていた。

「うっわビックリ!!あんたあの時の子でしょ!?ホラあの…ホラ!!トンネル作ったりしてさぁ!昔一緒にあそんだじゃん!!」
「いや…あの…」

立ち上がって祐希に詰め寄る橘くん。
祐希はそんな橘くんに驚いている。

「ね!?」
「どちら様ですか?」





『お疲れですねー』
「はー、疲れた」

授業の間の休憩時間。
わたしと祐希は悠太たちのいるクラスに来た。

「どしたの今日は。休憩時間のたび来るね」
「なんかあの席いると妙なアプローチを受けるから…」
『もう授業中喋りっぱなしだよね』

さっきの授業のことを思い出して苦笑した。

「あらめずらしい。祐希に正面からぶつかっていける人がいるなんて」
「正面っていうか…右側から?」

祐希がそこまで言うと、どーん、と祐希がぶつかってきた。

『わ、』

悠太が大丈夫?、と声をかけてくれる。
なに?、と思って祐希のほうを見れば、橘くんがぶつかってきたためだった。

「みーっけた! うおっクローン!!?」
「……」

橘くんは祐希と悠太を見比べて驚いていた。

『あの、橘くん…』
「あ、あの時の可愛い子だ!」

祐希と本当に知り合いなの?と聞こうとすると、がし、と肩を掴まれ、思わずひい、と声が出た。

「いやー、今日は2人も再会するなんて!運命だ運命!」

あ、携帯持ってる?クラス何組?ってか名前は?、なんて聞いてくる橘くん。

『4組の柊愛…』
「え、同じクラスじゃん!!」

うわー、やばい、なんて叫ぶ橘くんにすごい周りの視線が突き刺さる。
もちろん、わたしたちにも。

「お付き合いしてください!」
『はい!?』

何言ってるのこの人!、と心の中で突っ込んだ。
困っていると、悠太がずい、とわたしの前に出た。

「どうも浅羽悠太です。うちの祐希と愛とはどういったご関係で?」

どうやら助けてくれたらしい。
橘くんはそっくりだー、と言い、興味は悠太にいってくれたみたいだ。

「彼の妄想の中では昔の知り合いらしいです」
「違うでしょ!?ホントに知り合いでしょ!?」
「だって知らないんだもん」

ショックを受ける橘くんに、いつも通りの祐希。

「それよりオレらマブダチってことにしてもいい?」
「何言い出すのこの子…」
「なんかゆっきーをネタにあげると女の子がすごい寄ってくんのよね」
『(祐希をダシに…)』

興奮する橘くんにわたしたちは冷めた。

「へー、ホントにゆっきーとか呼ばれちゃう仲なんだ。オレ、お前と同じクラスで学級委員やってる塚原要な。わかんねーことがあったら…」

わたしたちのクラスから要が出てきた。
橘くんは要を見ると、へっ、と鼻で笑った。
それを見た要はピキリ、と固まった。

「この真っ先にオレをイラつかせる性格…っ。知り合いだ。ぜってーこいつらの知り合いだ」
「いやでもまったく知らないってさ」
『あ、いや、わたしは…』
「あー?ドン忘れしてるだけじゃねーの?」

バカだし、とわたしを見ながら言う要にムッとする。

「でもオレ昔からいつも祐希と愛と遊んでたけど、あんな子と一緒にいるの見たことないよ」
『あら』
「ちょっとゆっきー!」

祐希はわたしの腕を掴むと、橘くんから逃げるように歩き出した。







- 14 -

← |

bookmark
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -