「はい、お弁当とフェリシーのご飯。気を付けて行くんだよ?」
『あ、ありがとう…』
「ニャー」
お父さん、お弁当重いし大きすぎない?
重箱?こんなに食べれないって…。
フェリシーも何かを思ったのか小さく鳴いた。
「ほら守里、今日は早起きして作ったぞ!」
『わ、ケーキだあ…!ありがとうお兄ちゃん!』
良兄が珍しく早起きして作ったチョコケーキの入ったタッパーを持つ。
隣でおじいちゃんが、またそんなものを作ったのか!と叫んだ。
ケーキの入ったタッパーを受け取ると両手が塞がってしまった。
重いなぁ、後で式神で送ってもらえないかなぁ、なんて思う。
「よいか、守里。妙だと思えばすぐに報告しろ」
『うん、わかった』
「守里姉…」
『ときどき休みに帰ってくるから大丈夫だよ』
そう言って不安気な顔をする利守の頭を撫でてやる。
フェリシーも名残惜しそうに利守の足に擦りついた。利守は、フェリシーに餌をあげられなくなるのは寂しいな、と呟いてフェリシーを撫でた。
『…じゃあ、もう行くね』
「ああ、誇りをもって仕事をしてこい」
「新しいお友達たくさん作るんだよ」
「いってらしゃい守里姉」
「あ、ケーキの感想聞かせてくれよー」
良兄は放っといて、三人に笑顔で手を振った。
雪村家の前を通ると、ガラッと玄関が開いて時音ちゃんが出てきた。
「守里、気をつけてね。フェリシーも」
時音ちゃんはフェリシーを撫でてそう言いながら優しく笑って手を振ってくれた。
よし、頑張ろうと道を歩いて行く。
後ろで雪村家のおばあちゃんとうちのおじいちゃんが叫ぶ声が聞こえた。
また喧嘩が始まっちゃったのか…。
『本当、いつも通り平和だね』
「ニャー」
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