『…なんでリクオくん…』
町内を見回ろうと丑三つ時頃、外に出た。
この町には烏森学園のような特定された力の強い場所はないため、範囲は広いが町を見回るしかない。
「それが男心ってものよ」
『…そんなことより、家から出ないでくださいね』
一応家の敷地から出られないように結界も張ったし、式も置いておくことにした。
「これだけ厳重だったら出られないわよ」
やれやれ、とため息を吐きゆらゆらと揺れる彼女にため息を吐いた。
『じゃあよろしくね』
「はい。お気を付けて」
式に彼女と繋がっている念糸を持たせ、下にいるフェリシーを行ってきます、と言いながら撫でた。
『……』
今夜も普段と変わらず住宅街は静かだ。
しかし住宅街から明るい方へと行くと路地裏には妖はうじゃうじゃといる。
『滅!…天穴!』
一人で歩く女性の後を追う妖怪だった。
妖怪は種類も豊富らしくよく専門的なことや名前もわからない。
しかし、人を襲うならば敵だ。そこは、全ての妖は悪と言う花開院さんとは少し違うかもしれない。
幸い女性はイヤホンでも付けていたのか、こちらには気付かずに歩いて行った。
『…はあ』
わたし、リクオくんに何か悪いことしたかなぁ…。
*
「おはよう」
『……おは…?』
朝、2階の自室から降りてくるとソファーにリクオくんが座っていた。
『え、なんで…』
「昨日手伝うって言ってたから」
『いや、あの…』
「話は守里ちゃんの式神に聞いたよ」
それに家に入れてくれたのも、とリクオくんは言う。
寝ている間見張りを頼んでおいた式がいるだろうキッチンに向かった。
『…なんで知らせてくれなかったの』
「いえ、お疲れのようだったので…」
『……』
なんでわたしの作る式ってこう、勝手というかなんというか…!
『もー…』
*
「ってあれ?神社?」
『そこは聞いてない?大事なもの、って言うのは生前使った藁人形だとか…』
「…それが未練だったの?」
『うん』
「……」
山道を登りながら話す。
彼女は何かされても面倒なので置いてきた。
一応、連絡は取れるように携帯は持ってきたが。
『確か神社の近くの木っていう話だけど…』
「あれじゃない…?」
顔色を悪くして指を指すリクオくんの先を見ると、確かに木に刺さっていた。
『随分古いものだね。写真も薄汚れてるし…』
木が覆い茂っているから雨風はなるべく凌げたとしても、藁人形が残っているとは…。
『とりあえず抜いてみる?』
釘を抜こうと手を伸ばすとパシリと腕を掴まれた。
「いや、でも触っちゃっても…」
『大丈夫じゃない?呪いになった元凶が家にいるんだから』
「でも藁人形ってそれ自体にも何かあったり…」
『そんなことな…』
気配を感じ、藁人形をハッと見た。
『…?』
「守里ちゃん?」
どうかした?と心配そうに聞いてくるリクオくんに首を傾げて何でもない、と首を横に振った。
『(確かに視線か何か…)』
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