冥王星SS2






学校を出てなんとなく歩き始める。妙に緊張してしまうのは私だけなのだろうか。
「覚えている?私に一番最初に話しかけてくれたの貴方だったよね」
沈黙を破ったのは冥王星ちゃんだった。
「もちろん。あんなに勇気を振り絞ったのはここ数年で一度きりだったから」
「あのあと、クラスと馴染めても全然話せなかったから本当は嫌われているのかなとかおもっていたの」
「そんなこと、まったく」
嫌っている、なんて有り得もしないことを否定すると、彼女は嬉しそうに笑った。
そんな風に話していると、私の家の近くまで来てしまっていた。帰り道に話をするだけだと思っていたのだが、冥王星ちゃんは話したりなそうにしているしどこかに寄ったほうが良かったのだろうか。
「あ、あがっていく?」
今更かもしれないがどこか落ち着いたところで、と思って誘ってみると彼女はにこにこと笑ってうなずいた。



お茶を入れたり、学校でのくだらない話をしたり、あっという間に時間が過ぎた。
「――楽しくて」
「ねえ、冥王星ちゃん最近ボーっとしているよね、どうしたの」
「そんなこと、大丈夫だよ」
「なにか私に話そうとしてくれていたんじゃない?」
私が気になっていたことを切り出すと、冥王星ちゃんは少し黙りこんだ後、私の服を掴んでこぼれだすように泣きだした。
「私、前の学校に通っている時、合っていないのかもって少し思っていたの。でも私はあの場所が好きだったから、必死に頑張って、頑張って…でも私の居場所は此処じゃないって言われて追い出された。周りの子がどんなに優しい言葉をかけてくれても心は癒えなかった。そうして今の学校にきた時は、馴染もうとも思っていなかったし、なんとかやり過ごせればいいと思っていたの。でもあなたが声をかけてくれて、皆と話していたらああ、私は此処にいていいんだなって思えたの。でも、でもね…」
彼女は、冥王星ちゃんは、それからひたすら泣いて、泣きじゃくって、私は彼女が泣きやむまでひたすら待った。
そうして彼女が落ち着いたころ、もう一度彼女は話し出した。
「私は、場違いだったのかなあ、今まで頑張ってきたのはむだだったのかな」
「私はそうは思わないよ」
「え?」
「冥王星ちゃんは、私の中で太陽だよ。いつも照らしてくれて、ありがとう。」
私は少し照れくさくて、冥王星ちゃんから目を逸らしながらそう言った。


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