水曜日の朝、彼女のアラームはオフ4




彼女が俺に見せたのはホラー映画で対して怖くないものだったが、彼女は時たま「ひいい」やら「ぎゃあ」やら奇声を上げながら見ている。驚いて抱きついて「あっ…」なんていう嬉しいサプライズはなかったものの、僕の後ろに座り、常に僕の肩越しに画面を見ていた。彼女が声を出さなくとも彼女が驚いたことは僕を掴んでいる手から振動でわかるのだが、彼女は気付かれていないと思ってか声を押し込めることに必死になったりしていた。
怖いシーンが落ち着いた頃「そんなに怖いのか」と茶化そうと振り向くと、不意にびっくりするシーンがあったらしく、彼女と僕の唇がぶつかってしまった。
「ご、ごめん」
「ひいいもうむりい!」
彼女は気が付いているのかいないのか、僕の肩に顔をうずめた。



映画のエンドロールが流れるとラストシーンで感動したらしい彼女は眼を真っ赤にして鼻をすすっていた。
「ありがとう、ホラー映画なかなか一人で見られなくてさ。君がいてくれて本当によかった。このDVD明日返さなきゃいけなかったんだよね。」
「俺が帰っていたらどうしていたんだ」
「見なかったか、もしくは無理やり見て、怖くなって君を呼び出していたかもね」
俺が困ったような顔をすると、彼女はうふふと満足そうに笑った。
「じゃあそろそろ寝ようか。あっちが寝室だよ」
彼女が迷いなく寝室へ案内するので、客人用の布団でもあるのだろうと思っていたのだが、寝室には布団が一枚敷いてあるだけだった。
「じゃあ私はこっちで寝るから君はこっち側ね」
あっさりと同じ布団に並べられている枕を指差して彼女は布団に入ろうとしていた。あんなことがあってもまだ僕のことを意識していない様子だった。
「さすがに結婚前の男女が同じ床に就くのは…」
あまり生々しくならないよう遠まわしに言うと、彼女はその言い回しがおかしいのかったのか声を出して笑った。
「私は気にしないからいいよ?君が気になるなら客人用の布団でも出すけど、可愛い布団だしまだ使ったことないからなんかさ」
彼女は終始僕をからかうかのように半笑い顔をしていた。
「だからお前は」
無防備すぎるんだ、と言おうとして俺が気にしていることを彼女にわかられてしまうのが照れくさくて溜息をついた。
「私は君に対しては無防備なのよ」



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