水曜日彼女のアラームはオフ3
○
「あはははは」
女性特有の高い笑い声が聞こえて目を覚ました。彼女がテレビを見ながら笑っている。
「あ、おきた?あのね、これ面白いの、見る?」
半笑いで話しかけてくる彼女は笑いすぎて目を潤ませている。それと僕には柔らかい毛布がかけられていて、彼女が黙っていたらまた眠ってしまいそうだった。
彼女を良く見ると少し髪が濡れている。彼女もシャワーを浴びたのだろうか。
「ほら、みてみて。きっと君も面白いって思うよ」
何年も会っていなかったのだからそんなことわかるはずもないくせに、と思いながら寝ぼけ眼でテレビを見やる。彼女はそれを見るのが数回目であるのに大爆笑している。かくいう僕は思いのほか面白かったのが悔しくて、彼女にばれないようにくすくすと笑った。
「あ、ほら、やっぱり。でさ、この人がさ、」と僕が笑ったのをいいことに彼女はぺらぺらとその番組の出演者やどういう流れだったかを喋る。それが心地よくて僕は相槌を打ちながら時々あくびをした。そのたび彼女は話すのをいったん止めて、僕があくびを終えて「うん」と頷くと話を続けた。色々なことを話して満足したらしい彼女は、やっと僕に着いて言及した。
「眠たいんだったら寝る?布団はあっちだけど。」
「いや、さすがにいいよ。お前が買ってきてくれた服でも着て帰るから」
「あ、もうここから駅へのバスないけど…」
彼女は肩をすくめて俯く。
「ごめん、のんびりしていたから帰らなくても大丈夫かなって思って。今出て歩いていけば多分終電には間に合うけど、どうする?」
彼女はとても申し訳なさそうにしながら焦っているようだった。僕は少しの間をおいてから答える。
「いやいいよ、そこまでしてもらうのは悪いし、お前の帰り道のほうが心配だ。せっかくだし布団借りようかな。」
「良かった。じゃあ一本だけ映画付き合って!」
彼女は今までの申し訳なさが演技だったのようににっこりと、少女のように笑った。
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