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いちおう痛み止め用意したからね、とディアンが薬の説明をしてくれる。
機嫌は直ったようだ。
ようやく私の緊張も解ける。
「アミちゃんに何かあるのは困るけど、軽い怪我ならいつでも大歓迎なのにな」
痣に薬を塗って手当てをしてくれながら、ディアンはぼそりと独り言のように言う。
「は?なんで?」
「だって、そしたら店に来てくれるでしょ。僕が手当てしてあげられるでしょ」
私が怪訝な顔をすると、ディアンは子供のような理由を述べた。
怪我が大歓迎だと?
じゃあ、私がこの二週間悩んだのは……。
「……嫌じゃないの?」
「何が?」
「こんな傷だらけの女、嫌じゃない?」
恐る恐る尋ねてみる。
ディアンはきょとんとした顔をした。
「嫌じゃないよ。そりゃ心配にはなるけど、仕事で頑張ってきた証拠でしょ。なんで嫌になるの」
逆に尋ね返されて、私は返事に窮する。
なんだよこいつ。
私がどれだけ悩んだと思ってるんだ。
なんで欲しい言葉をくれるんだ。
「ばっかじゃないの。趣味わるっ」
「えーどうして。一生懸命なアミちゃんが好きなだけなのに」
好きとか簡単に言うなハゲ。
私はそっぽを向いて、それ以上何も言わなかった。
ディアンはそんな私を見て、くすくすと可笑しそうに笑う。
怪我の痛みさえも、彼の手当てで甘い疼きに変わる。
明日も来てねと小指を差し出され、私は目を合わせずに自分の小指を絡めたのだった。
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