悶々としたまま迎えた日曜日。
両親はデート、沙織は部活。
私だけ家にひきこもっていると、チャイムが鳴った。

「……よう」

部屋着にパーカーを羽織り、ぼさぼさの髪を手で梳かしながらドアを開けると、立っていたのは和哉だった。

「沙織ちゃん、いないよ」

「知ってる。部活だろ」

「……じゃあ、どしたの」

逃げ出そうとする体を無理やり抑えつけて、私は玄関に入ってきた和哉に平静を装って対応する。
しかし、彼は怒ったような拗ねたような顔のまま、返事をせずに黙ってしまった。
私はどうしていいかわからずに、その場に立ちつくす。

一体何しに来たんだこいつ。
ああ、沙織ちゃん早く帰ってきて。

「……この前、ごめん」

私が部活中だろう沙織を頭の中で召喚していると、突然和哉が声を発した。
ぼそりと独り言のように呟かれた言葉に、私は意味がわからず首を傾げる。

「この前のこと、ごめんって言ってる。泣かせるつもりじゃなかった」

私はぎょっとして目を見開いた。
まさか、あれくらいのことで謝りにくるなんて思いもしなかった。
というか、謝られることのほどじゃない。

「何言ってんの。私泣いてない」

「嘘つけ。泣いてただろ」

「泣いてない。あれくらいで泣かない。高校生にもなって」

「つい最近まで泣いてたじゃねーか。卒業式だって泣いてた」

誰にも気づかれないようにしてたのに!
見られていたのがわかって、私は顔を真っ赤にする。
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