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ふと視線を向けた先に、同い年くらいの男女の集団がいた。
女の子は浴衣を着ていて、男の子は手にいっぱい食べ物を持っている。
たぶんこの辺の高校生だろう。いかにも仲が良さそうだ。

その中に、勇介の姿があった。
いつもと違う、ちゃんとお洒落した格好。
私の知らない女の子と、楽しそうに話をしている。

それを見て、じりっと胸が焼けつくような感覚を覚えた。
とっさに身を翻し、出口へ向かって歩き出す。

見たくなかった、あんなもの。
来なければよかった、こんなところ。
振り返ることなくその場所を後にして、まっすぐにバス停へ向かった。

勇介に新しい友達ができているなんて、そんなの当たり前のことだ。
私が東京でそうしたように、勇介にだって新しい生活がある。
私がいなくなったからって、何かが変わるわけじゃない。
そんなことはわかっている。
わかっている、けれど。

目の前にした現実に、今まで感じなかった変化を突きつけられてしまった。
勇介がこの土地で送っている、私の知らない生活。
私が東京で送っている、勇介の知らない生活。
日傘に、白い肌に、向こうのことば。
変わったのは、勇介じゃない。
村を離れた私のほうだ。

東京に感じてしまう帰りたいという思いは、すでに私の帰る場所があちらに変わってしまったという証拠。
私の居場所はここじゃない。
私の居場所は、ここにはもう……。

どぉん、と大きな音が後ろから聞こえて、私は思わず足を止めた。
ゆっくりと振り返ると、ひゅるひゅると花火が上がっていき、夜空に赤い大輪の花を咲かせた。

次々と打ち上げられていく花火。
ぽろぽろと零れていく涙。

三年前、東京なんか行きたくないと思いながらこの花火を見た。
あのとき一緒だったみんなも、勇介も、今はもう違う場所から同じ花火を見上げている。

夏が終わる。
村で過ごす時間は、もうあと数日だ。
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