その次の日から、夕方になると散歩に出かけ、勇介とも会うようになった。
ふらふらと歩き、だらだらとしゃべる。
そのうち勇介が家にも来るようになって、以前の生活を送っているような錯覚を覚えるようになった。

「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど」

「今忙しい」

勉強でわからないところがあって声をかけると、勇介は縁側でスイカを食べていて、こちらを向くこともしない。

こいつは何をしに来たんだろう。
聞けば、同級生は部活だの夏期講習だので夏休みも学校に行っているらしいが、勇介は毎日のように村にいる。
他人事ながら心配になるが、なんとなく、進路の話はできずにいる。

「わからない……」

私は溜息をついて、ばたりとテーブルに突っ伏す。

「ほんなら、出かけようや」

やっと勇介が振り返り、私は躊躇したものの、その誘惑に負けて頷いた。

木漏れ日と蝉時雨の降る森の中、しばらく歩くと川が流れている。
辿り着いた頃にはワンピースが張り付くくらい汗が滲んでいて、私と勇介は早速サンダルを脱ぎ、岩場に座って川の中に足を浸した。

「気持ちいい」

冷たい水が、ひやりと足に纏わりつく。
青い空。
さわさわと揺れる緑。
きらきらと輝く水面。
手を伸ばせば届きそうな距離を、魚の群れが泳いでいく。

「帰りたくないな」

思わずぽつりと言葉が漏れる。
ずっと、ここでこうしていたい。
空を仰いで目を閉じると、隣で勇介が独り言のように呟いた。

「おればええやん」

私は勇介のほうへ顔を向ける。
勇介は川の流れに目を向けたまま、こちらを向く気配はない。

「……いられたらよかった」

私も川面に視線を戻し、小さく返事ともつかない答えを返す。
ぱしゃりと水面を蹴ると、水飛沫が跳ねてきらきらと輝いた。
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