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「あらぁ美緒ちゃんやないのー!」
スイカを持っていくと、出迎えてくれたのは勇介のお母さんだった。
「どこのお姉さんかと思ったわ。あんたいつ帰ってきたの?元気やった?」
「えぇと、昨日戻ってきて……これ、おばあちゃんから」
「あらまぁ、ありがとう」
相変わらずの元気さにたじたじになりながらも、私はスイカを手渡す。
「もうすっかり東京のお姉さんやなぁ。色も真っ白になって。お母さんたちも来てるん?」
「ううん、私ひとりで来たの。ここで受験勉強しようと思って」
「あぁそうなん?偉いなぁ。うちの勇介なんか勉強もせんとふらふらしてるでー。一緒に勉強させてあげてちょうだい」
おばさんが渋い顔で溜息をつくので、私はとりあえず笑ってごまかしておく。
それから上がっていってと勧められたが、断って元来た道を引き返した。
昼間の一番暑い時間。
蝉も大人しく身を休めている。
日傘の上にはぎらぎら輝く太陽。
道からの照り返しで、強い日射しが肌を焼く。
ふと、前から人が歩いてくるのが目に入った。
陽炎が揺れる。
私は目を細める。
高い身長。
白いタンクトップに、ゆるいジーンズ。
目に掛かった黒髪を暑そうに揺らし、近づいてきたその人が顔を上げる。
足を止めたのはほとんど同時だった。
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