「……反省してる」

ぼそりと零すと、鄭英は勢いよく吹き出した。
大笑いして火照った頬を冷ますように、扇子を取り出してひらひらと顔を仰ぐ。

「おまえからそんな言葉が聞けるとはな」

「どうかしてた。俺らしくなかった」

「最近自棄になってたからなぁ。頭冷えたか?」

「完全に」

おかげで酒が進む。
俺は空になった杯に酒を足した。
すべて忘れたいなんて気持ちになることは滅多にないが、今回のことは過去に戻ってやり直したいくらい後悔している。

「陛下が心配なさっている。おまえに会って詫びたいと」

「は?詫びたい?」

「おまえを謹慎にさせてしまうなんて、ってな」

俺が勝手にしたことを帝が謝る理由なんてない。
溜息をついて、杯を置く。
鄭英は笑って付け足した。

「しかし、気が晴れたような顔をしていらっしゃるよ。町に出られたのがよっぽど楽しかったらしい。こっそり話を伺うと、市を見て回っただの、美味しいお菓子を食べただの、それはそれは嬉しそうにお話下さった」

たかがあれくらいのことを。
帝の楽しそうな様子を思い返して、俺は再び杯を持ち上げた。

それならいい。
帝が喜んでくれたのならもうそれでいい。
思い悩んだって、済んだことはどうにもならないのだから。

「おまえもいい気分転換になっただろう?」

俺の杯に酒を注いで、鄭英が幼い子でも見るように目を細める。
渋い顔をして、俺は酒を煽った。

恐らくあの日は一生忘れない。
帝と二人で出かけることなど今後二度とないだろう。
その意味では、帝よりずっと自分のほうが特別な一日になったのは間違いないのだった。

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