しかし、引っ越しの計画はあっさりとバレた。
さすがのヴィムも、目も届かぬ遠いところに行こうというわけではなかったので、比較的近い場所に家を買っていたのだ。

「家を買ったと聞いたんだが」

レイモンから呼び出されて何事かと思えば、開口一番そう尋ねられた。

「俺は何の相談も受けていないんだが?」

珍しく怒っている。
まぁバレるかもしれないとは思っていたが、タイミングが悪すぎだ。
ミレイユの了解も得て、さぁこの家を出ようというときだったのに。

「反対するのはわかってるからな。だから言わなかっただけだ」

臆することもなく舌打ちをして、ヴィムは肘掛けについた手に頭をのせる。
おおかた神殿の人間のタレコミだろうが、今すぐつかまえてぶっとばしたい。

「……神殿に住まえと陛下からお達しが出ているのは知っているだろう」

「そうそう、そうやってあっちの肩を持つと思ったんだよ。オベールは国王の犬だからな」

「ここにいるから許されているようなものを。ヴィム。もうおまえは大人になったんだから立場をわきまえろ」

「大人なんだから監視役も必要ないだろう。おまえには感謝しているが、俺は人に命令されるのが大嫌いなんだ。ああ、人だけじゃない、神にもな」

面倒そうに反抗するヴィムの態度に、レイモンは渋い顔をする。
いつもと違い感情的にならないのは、すでにヴィムが心を変える気がない証拠だ。
レイモンは眉間を抑えて首を振った。
味方になってやりたいのは山々だが、こんな手のつけられない神を放置しておくわけにはいかない。

「そんなにうちでの生活が不満なのか?」

レイモンに聞かれて、ヴィムは呆れた顔をした。

「俺がおまえの嫁と仲が悪いのは周知の事実だろ」

「アデリアは、おまえが国の守護神なんてピンときてないんだよ。一般的な反応だ。仕方ないだろう」

「神だと理解したら態度が変わるのか?俺がそういうのが一番嫌いだと知らないのか?」

ヴィムはあからさまに不機嫌な表情になり、口調を強める。

「それに、一番はミレイユだ。あの子があれだけ頑固に家を出ると言った理由を、もう忘れたのか」

追い打ちをかけられて、レイモンは口を噤んだ。

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