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「ミ、ミレイユ。この家を出るのは嫌じゃないのか?」
素直に話を呑みこめないヴィムは、確認するように尋ねる。
「嫌じゃないですよ。もともと出て行く予定だったし、私がここにいても迷惑だと思うし」
「俺と一緒に住むのも、嫌じゃないのか?」
「どうして?あなたが嫌じゃなければ、私が嫌なんてことは有り得ないわ」
ミレイユは不思議そうな顔で首を傾げる。
その答えにヴィムは胸がいっぱいになり、頬が赤くなった。
「ミレイユ!今すぐこの家を出よう!」
感極まったヴィムは、ミレイユの体を強く抱き締めた。
嫌われてさえいると思っていたのに、こんな返事をもらえるとは思わなかった。
いっそ獅子の姿で暮らしてやろうかと計画していたのに。
よくやった俺。
人間に戻れてよかった。
「早く二人で暮らそう。邪魔者のいないところに行こう」
「お、落ち着いてヴィム。まずはちゃんと話してからでしょう」
わけがわからず抱き締められたまま、ミレイユはヴィムから逃れようと彼の腕を掴む。
「もう今日は夜だし。お兄様に許可をもらわないと」
その言葉に、ふっとミレイユを抱き締める力が緩む。
彼女からレイモンの話が出て、ヴィムの機嫌は急降下した。
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