ミステリーツアー 2


やけに長いトンネルを抜けると、開けた視界の先に、見たこともない町の景色が現れた。見るからに古くて、どこか現実離れした雰囲気。見た感じ、人の気配はないけど、廃墟って感じじゃないな。
いつも通り、ちゃんと地図を確認ながら運転してたのに、何でトンネルを抜けた途端、こんな場所に?カーナビはしれっと「目的地に着きました」なんて言ってるけど…

「うわー、ここすごいっすね!映画のセットみたい!」
「トラさん、こんな場所どうやって見つけたんです?」
「えーっと…ごめん、ちょっと待っててな?」
「はい!」

盛り上がる後輩達を車内に残して、トラさんは慌てて車を降りる。その瞬間、ふわっと不思議な空気に包まれるのを感じて、思わずきょろきょろした。でも、近くには何もいない…

「トラさん!ここってどこですか?そろそろタネ明かしを…」
「いや、それが分かんないのよ。本当はここに来る予定じゃなくて…」
「えっ…!」
「ごめん、本当は山奥風のコテージに行きたかったんだけど…どこだここ?」
「…マジ、すか…?」

期待で目をキラキラさせてた後輩達が、固まって絶句してる。そりゃそうだよな。俺だって、これ以上どう言ったらいいのか…。目指してたのは割と都心に近くて、ちょっと自然の多い地域だ。でも、ここは見渡す限り森に囲まれた小さな町で、立派な道路もないし、電柱さえ見当たらない。車のガソリンの匂いもしない。見事なまでに自然豊か。

「またまたー、トラさん、ここでドッキリ大成功!とか言うんでしょ?」
「あのさ、そんな難しいこと、俺にできると思う?サプライズだって一回も成功した事ないのに」
「あはは、確かに…先に喋っちゃいますもんね」
「真面目に言うけど、知らない間に道が変わって、違う場所に着いてたんだよ。カーナビがここで間違いないって言うから」
「えっ…!じゃあ、カーナビがバグっちゃったってこと…すか?」
「多分ね…ちょっとビビってはいる」

怖いながらも、この珍しい現象を番組にしてみるのも面白いと思い、とりあえず撮影は続行することに。

「カーナビがバグって画面がおかしくなる、とかは聞いたことあるけど…全く違う場所に着いちゃうなんて、聞いたことないよね」
「何かに導かれたのかなぁ?ある意味、サプライズ的な楽しみもありますよね」
「でもさ、本当に行って大丈夫?もし万が一、帰れなくなったりしたら…」

皆で後ろを振り返ってみると、今さっき通ってきたトンネルの中は、なぜか暗闇に包まれている。

「えっ、何で?さっきまでライトついてたのに、真っ暗…」

その時、トンネルのライトが再びパッと点いたかと思うと、チカチカと点滅し始めた。まるで、人がまばたきをするみたいに。
そして奥の方から、湿った空気と共に、人の唸り声のような、低い音が聞こえてきた。よく聞くと、音楽のようにメロディーがあって、何か言葉を喋っているような…

「と、とりあえず、他に外と繋がってる場所がないか探してみよう!」
「そ、そうっすね、とりあえず車に戻りましょう!」

何から何まで予想外の開幕となった、トラさん主催のミステリーツアー。とりあえず外に出るのは怖いので、ゆっくりと車で走りながら、車窓から町の様子を眺めることに。
少しでこぼこする道の感触は、きっと人が歩く為のもので、車が通ったことがない感じだ。道の両脇には、お地蔵さんの代わりに、見慣れない姿をした動物?あるいはキメラ?の石像が佇んでいる。怖いけど、何とも神秘的な雰囲気だ。

「それでは…車の中から失礼します。今回トラチャンネルが迷い込んだのは、何から何まで情報ゼロ、の謎の町です!トラさん、どこか気になる所はありますか?」
「えー?そりゃ全部気になるよ!人は全然いないし、変な像は立ってるし…まさか、動いたりしないよね?」
「アハハ、それは流石にないと思いますけど…確かに、まるで生きてるみたいですね」
「うん、何か見られてる感じがするっていうか…」
「あ、トラさん、見てください!あの建物!すごく立派ですよ」

道の先に見えてきたのは、黒々とした木々をバックにそびえ立つ、白い建造物。遠くからでも、立派な洋風の屋根が見える。高い石塀に囲まれていて、見るからに、秘密が隠されていそうな感じ。

「見た感じ、お城?みたいだよね?誰か出てきたらどうしよう…」

近くまでやって来ると、車を停めて、しばらく様子を伺う。やっぱり、人の気配はない。誰もいないのだろうか…。
と、ここで、勇敢なしょうちゃんがある提案をする。

「怖いけど…ちょっと外に出て、拝んでいきませんか?旅の安全を祈って…」
「ああ、そうだね。拝むって意外と効果あるから…無事に帰れますようにって、お祈りしとこう」

そっと車を降りる4人。辺りは相変わらず、怖いくらい静かだ。

「ひえー…近くで見るとほんとデカい…!」
「すごく古そうなのに、ちゃんと建ってる…柱がしっかりしてるんだ」

これまで訪れてきた古い廃墟は、柱がくたびれていて、何となく傾いて見えるけど、この建物は、しっかり地面と垂直に立っている。その一方で、外壁はすっかり苔むして、よく見ると、玄関の扉まで、ツタで覆われている。
恐る恐る、4人で手を合わせ、挨拶をし、無事に帰れるように祈る。そんな中、ちゃっかり番組の撮れ高を祈願してる奴が約1名。


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