ブティックで見つけたもの


しょうちゃんは昔の場所が好きだから、気づいたら皆の先頭に立ってる。

「…あ、ここ開いてますよ?」

通りの中心に差し掛かると、少し大きな建物が見えてきた。多分、当時の百貨店みたいな感じかな?
しょうちゃんが、開きかけていた入り口の扉をそっと引いてみて、皆の方を振り返る。

「え、行く?」
「うん、ちょっと入ってみたいっす」

俺は正直不安だけど、カメラを持つしょうちゃんは興味津々で頷いた。

「大丈夫かな…天井崩れたりしない?」
「暴れたりしなきゃ大丈夫っすよ、多分…」
「た、多分?」
「危なそうなら、すぐ出ましょう!命が一番大事なんで…」

いつものように、しょうちゃんの背中に隠れながら中に入る。中は不思議とホコリっぽくなかった。これはどっちかというと…閉め切っていたクローゼットの匂いだ。

「お邪魔しまーす…」

中はとても綺麗な状態だ。やっぱりここも、誰かが立ち入ったような形跡はないな…。
暗い中をライトで照らすと、年季の入ったラックが整然と並んでいて、白黒写真で見るような、色あせたレトロな服達が、今にも崩れ落ちそうな姿でハンガーに吊るされていたり、四角く畳んで並べられたりしている。本当に、手つかずの状態なんだ…

「ゴーストタウン自体はそんなに珍しくないけどさ…ここまでちゃんと残ってるって、奇妙じゃない?」
「ですよね…集団ヒステリーが原因っていうのも怖いし…もしかしたら、宗教的な理由もあったんですかね?」
「ああー…そうかもな。あの鹿の像…」

脳裏に浮かぶのは、宗教的な理由から起きてしまった悲劇の数々…今回の早苗津間も、比較的小さな町だし、ありえない話じゃない。当時、ニュースにならなかった理由は…色々とありそうだし、あえて詮索する必要もないと思う。

「…あ、鹿だ。ここにも…」

そして、ここのレジにも、やっぱりあった。意味ありげにたたずむ、鹿の彫像…。想像では、この地域で信仰の対象であったもの。貴重な動物の骨で造られた白い雄鹿と、水面を表現した丸い台座…やっぱり、あのポストカードに描かれた湖と関係あるのか?

「あっ、クモ…」
「えっ?」

よく見ると、白い鹿の足元にちょっと怖いシルエットが見えた。やや大きめのクモらしきものが、長い脚をすぼめて仰向けに転がってる…脚には鮮やかな赤い模様が入ってるみたいだ。

「これ…彫刻の一部、ではないですよね?触る勇気はないけど…」
「え、これ…うわ!?ほんとだ!やだ、もう帰る!」
「オチアイさん落ち着いて!これ死んでる、死んでますから!」
「死んでても無理!」

俺はクモが大の苦手!ほんの親指の爪くらいの大きさのやつでも無理で、いつも皆に追い払ってもらってる…。我ながら子供みたいでスゲー恥ずかしいけど、怖いものは怖いんだから仕方ない!

「でも、この死体…よく見たら、まだ新しい感じしません?」

恐る恐るカメラを向けながら、サトちんが嫌なことに気づく。

「そうだね…体の色も派手だし、もし生きてたら危なかったかも」
「オチアイさんの安全の為にも、虫には注意して探索しなきゃね…」
「いやほんとに、頼むよ。まだ死にたくないから俺…!」
「死なせませんよ。てか、死んだらぶっ生き返しますから!」

まーくんの愛あるツッコミで笑いが起きて、ちょっと空気が和んだ。


(続く)


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