「銀時!私は腹が減ったぞ」

俺が居間に行くと、待ち構えていたように声が飛んできた。音源の方を向くと、そこには神楽と変わらないような年頃の女。真っ黒でフリフリで丈の短けえ着物を着て、テーブルの上に仁王立ちして俺を見下している。俺はやれやれと言った感じでその女、名前に向き直った。

「ウチにはなんもねえっつうの」
「何も無いと言うことはないだろう。何かしらあるはずだから探してこい」

はあ、なんで俺が?この家の主は仮にも俺なんだぞ。…と思いつつも俺は台所にのそのそ歩いて行く。自分で自分が情けない気がしなくもない。

「たくあんしかねーぞ」
「それで結構。持って来るのだ」

たくあんの乗った皿を名前に渡すと、嬉しそうに目を細めてちびちび食い始めた。ちっちぇえ口だなあ。神楽なんてもっと大口開けて食うのになあ。まあそこらへん女の子ぽいっつうか、この辺の女共とはちげえよな。

「現世の漬物と言うのは実に美味しいものだな」
「ほんと好きだよな」

ポリポリとたくあんをかじる名前。その姿は俺の基準で言えば上の中くらいだ。…まあ、その可愛らしさから電波中二病邪気眼娘という事をマイナスしてしまうと名前には何も残らないのだが。
名前は、この変わり者揃いのかぶき町の中でも屈指の変人だ。あの高杉をも上回る中二病で、自分は魔界から来たと言い張り、常になんかのコスプレ衣装の様なヒラヒラした着物を着ているロリ…失敬、少女だ。見てくれはそれなりに可愛らしいのに中身が残念なのだ。

「それでは私は現世の巡回に行って来るよ」
「ああ」
「私の居ないうちに悪魔共が来たらすぐに連絡するんだぞ?」
「あーはいはい」
「志村君を割らないようにな」
「気をつけるわー」

何故か名前にとって新八は、「志村君という名前のただの眼鏡」らしい。まあ地味だからそれも仕方ないかもしれないけどね。
名前はたくあんのあった皿を台所の方へ持っていった。そしてそのまま玄関へ向かっていく。改めて全身を見ると、態度はでっけえ癖に、ちいせえなあ。

いつの背中



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