小説 | ナノ

ピアノと喜びちゃん 2*


コンスタンティン
樫戸 喜代(かしど きよ)





「こすちゃ?」


 藍色の瞳が見上げてくる。高校生男子の引き締まった肉体は色香に満ちていて、風呂上がりの清潔な香りすら麝香のように俺を酔わせた。
 泊まってもイイ、なんて、いいお兄さんぶるんじゃなかった。でも外は夕方から夜の今に至るまで豪雨、外界と切り離されたこの家でふたりきり。
 随分サイズの違う俺の服を着てぶかぶかだと目をくりくりさせる姿、真っ白な生足、ベッドに無防備に寝転ばれたらもうだめで、情けなくも覆いかぶさり、見上げられている。というわけだ。ただ姿を見ていただけで俺の下半身には血液が集中し、痛いくらいに勃起している。こんなことは全くなかった。

 自分で自分に戸惑うくらいの欲情を感じ、簡単にキスさえもできないような気がする。
 顔の両脇へ肘をつき、膝を立てた姿勢で覆い被さりしばらくして、先に動いたのは喜びチャンの方だった。俺にあらゆる幸せをもたらしてくれる存在は、今日も俺を幸せにしてくれる。
 首を引き寄せられちゅっとキス。可愛らしい音をたてながら何回も唇を啄まれ、その間に指が俺のシャツのボタンを外した。
 腹筋を撫でる手のひら、腰の線をたどり、ズボンを押し上げるそれにゆっくり、手のひらが添えられた。


「っ、」


 腰が震える。目の前の愛しい少年の、白い手のひらがぎこちなく上下するのにひどく感じてしまう。手慣れていない様子にほんの少しの安堵を感じたりもした。
 上半身を伏せ、彼の肩近くのシーツへ額を寄せる。下半身だけ持ち上げた姿勢はずいぶん滑稽だろう。


「こすちゃ、気持ちいい?」


 揉まれたり、撫でられたり、擦られたり。そんな風にされて、布越しだというのに俺の下半身はびしょ濡れ。下着がはりついている感触にさえ声が漏れる。


「大きくて、硬い」
「……ん」


 このままさせていたら、いかされてしまう。
 名残惜しくもありつつ手のひらを引き剥がした。身体を起こして見下ろす。
 喜びチャンの藍色に、さっきまでなかった色が溶け込んでいる。欲情の色。俺に比べたらずっと華奢な首を撫で、Tシャツを捲りあげた。
 それなりの質量をもって反り返る肉棒。ピンク色だがしっかり剥けきり、なんとなく年代にそぐわない雰囲気が漂っている。
 手のひらを添え、熱を堪能しながらちらりと目をやると、恥ずかしそうに頬を染めた。


「喜びチャン、えっちなことがスキみたい」
「なん、」
「ココ、たくさんツカッタでしょう?」


 包み込み、手を上下させる。手が大きく、力も強めだからか腰を持ち上げ悶え、透明な汁を先から溢れさせた。


「ドウなの? 女の子? 男の子?」
「っ、」
「これからは、ダメよー。ツカウときはワタシと、ね」


 口に入れる。舌を絡めたり吸ったりしていたら、オスの本能なのか腰がふらふら、喉を突く。喘ぎながらそうされるのも悪くない。
 暴れる腰を撫でたり太ももに触ったり、なだめているうちにとろとろ勢いなく射精した。


「ふ……」


 目を閉じ、ひくひくする身体。色っぽくて素敵だ。
 濃い液体を飲み干して再び見下ろすと、うとうと。出したらすぐに眠くなる人らしい。頬を撫でて服を戻し、毛布を掛けて眠るよう促した。

 今日もピアノがあったので疲れていることはよくわかる。けれどきつきつのこの下半身をどうしたものか。

 少し考え、寝顔を見て手を見て思い浮かんだ不埒な行為を選択した。
 ベッドの脇に立ったまま身を屈め、力の入らない白い手へ、いつもレッスンでやっているみたいに手を重ねて俺のを握り込ませた。
 寝ている喜びチャンの手を使った自慰なんて最低だと思う。けれどなんとも我慢できないし、ひとりで処理したくない。
 しっとりした手のひらが気持ちよく、腰を振りながら白い頬にキス。匂いだけでいけそうな気がする。
 ハァハァ言ってしまうのを抑えつつ、首や髪へ鼻先を押し付ける。とんでもない変態になった気分だ。

 ごめんね、喜びチャン。俺も自分がこんな変態だったなんて知らなかった。
 でも愛してるから許して。髪も顔も身体も匂いも、手のひらも。





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