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猫のきみ 2


 目を覚ますと枕のすぐ隣に黒猫がいた。小さな体をくるりと丸め、尻尾かおしりに鼻先を埋めるようにして眠っている。
 実に可愛らしい。つやつやの美しい毛を撫でるとつるつるで、まるで上質な絹のよう。
 ああかわいい美猫ちゃん。拾って正解だった。

 両手ですくい上げ、胸に抱える。三角の耳をぴくぴく動かして鼻をひくつかせ、胸へ擦りついてきた。
 それから目を開けて見上げてきて、甘い声ひとつあいさつのように鳴く。おはよう。返すと、鎖骨あたりを甜められた。普通の猫ではないからか、舌は滑らかであった。


「サクラ、今日は寒いな」


 またにゃあん。顔からして多分同意だ。


「こんな寒い日にひとり寝は寂しいもんだな」


 ぽつりとつぶやく。普段からずっとひとりなのに、なんでもないことなのに、なんで言ってしまったんだろう。


「すまん、なんでもない。お前の温かさだけで充分だ」


 じっと見てくるサクラの目から逃げるように布団をかけ直す。
 と、むくむく布団が膨らんだ。
 やがて顔を出したのは、くりっとした目が可愛い男の子。唇をふにゃんとさせて、顎をぺろりと舐めてくる。


「……リオ、ぼく、人になれば、もっとあったかいよ」


 少年らしい声でたどたどしく話す。胃の裏のあたりがぎゅ、と苦しくなる。ああ愛しい黒猫。人の姿になるのは好きではないだろうに。
 抱きしめると笑みを浮かべて顔を埋めてくる。素肌がさらさら手のひらに心地良い。


「確かに温かいな」
「そうでしょ」


 眠そうに目を細める。
 猫のときと同じ黒い髪に顔を埋めると、日向のような匂い。
 やがて聞こえてきた寝息に耳を傾けながら、俺もゆっくり目を閉じた。






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