寒いけどさ。 | ナノ








「家賃ーっ!!」

そう叫びながらカウンターに突っ伏したルーシィをミラは「また足りないの」と苦笑気味に声をかけた。ルーシィが家賃に苦しんでいるのを見るのは、決まった周期で必ずやってくる。

「はい……、あとどうがんばっても一万が……明日なのにー」

今はもう昼だ。食事を削っても足りないらしく。今から仕事に出かけても今日報酬を手に入れられる仕事がうまいことボードにはなかった。

「一万かぁ……あ!!」
「ミラさん??」と顔をあげれば、にこにことしたミラさんがルーシィに指を一本口に当て。

「ルーシィに、とっておきの仕事をあげる」





寒いけどさ。





「さっむっいっー!!」

はっ、と息を吐き出せばそこは白く陰り、自分の体感温度さえも下げたような錯覚に陥る。あぁもうあぁもう!!と同じ言葉を繰り返し繰り返し呟いて摩擦熱を欲して自分を抱くように体をさすった。
冬のマグノリア。さんさんと降っていた雪がごうごうと吹き荒れ、それがやんだ頃にはギルドの周りは雪でいっぱいになっていて。
ルーシィが家賃家賃と言っていたのに仕事に行かなかったのは雪のつもり方も一因していたのだが。その雪の中、ルーシィとナツはギルドの雪かきをするべく立っていた。

「雪だー!!」
「なんでそんな元気なのよあんた……」
「雪だぞルーシィ!!」
「知ってるわよ……」
「ほらルーシィ!!」
「ちょ、当てるなっ!!」


ミラがルーシィに与えてくれた仕事は、ギルド前の雪かきだった。雪かきをするだけで一万。なんという破格だ、と思ったがそれは多分ミラの優しさなのだろうと受け取り。それを断ることなど、金銭的な意味からすることなどできなくて。


「ナツ、邪魔するならギルドに入りなさいよ」

ルーシィが雪かきをしていた最中、ナツはギルドにやってきて寒さに凍えながら作業に勤しむルーシィを見つけると楽しそうに笑いかけてきたのだ。

「邪魔ってなんだよ、ルーシィ遊んでたんじゃねーのか??」
「一人で遊んでる訳ないでしょうが!!」
「いや、ルーシィだから……」
「哀れな目で見るなっ!!仕事よ、仕事っ!!」


事情を説明してやると、あぁと若干馬鹿にされたような目で一瞥され。

「寒いからはやく終わらせたいのっ……!!」

言い訳をするようにがさがさと雪かきを再開させれば。

「さみいのか、ルーシィ」

的外れな疑問に「そりゃあね」と息を吐き出した。息は白く濁って、外気に晒されている顔や手は寒いを通り越して赤く痛い。それを聞いたナツはふーんと呟いて。

「ルーシィ」

名前を呼ばれて、気休め程度に息で手を暖めていたのを止めて上を向いたらナツが「んっ」と短い言葉と共に手を差し出していた。

「……食べ物なんて持ってないわよ」

そう言えば、ちげーよという小さな否定と勢いよく伸ばされたナツの手に自分の手を捕まえられた。

「あったけぇだろ?」

そこには他意もなにもなく、にこにこと屈託なく笑うナツがいて。

「そうね」

目線をそらしてため息のようにその言葉を吐き出したルーシィの体は、繋がった手だけではなく全身温かかった。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

寒いけどさ、君がいれば。




おまけ




サカサマサマーサイダーのさまーさいだー様から素敵な小説を頂いてきました!

「あったけぇだろ?」のナツの言葉に胸が高鳴りました!強引に手を取るとかの行動にルーシィは、ナツだから他意はないんだろうなとか思っていながらもドキっとしちゃってたりする感じかな?なんかすごく2人っぽくてドキドキです(>_<)
しばし皆さんの所に行くのを控えていた為、掲載が遅くなりすみませんでした<(_ _)>せっかく書いて頂いていたのに!しかも雪かき屋さん状態のトムを応援する為に書いて下さったそうな!ありがとうございます(>_<)私も何かお礼をしなければ罰があたりますね;;
でもとっても嬉しかったです。ありがとうございましたー!!

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