il mio tesoro,non ti lascero mai



時々、おかしな夢を見る。

それはとても、あたたかい夢。
優しい笑顔。たくさんの、笑顔。
疲れ果てた私を迎えてくれる、優しい言葉。


ーおかえりー

ーおかえり。ルフィアー


ただいま。
そう返したいのに、私は声が出ない。

おかえり。
笑ってくれる頬に触れたいのに、私の手は止まる。


ーだれ?ー


あなたたちは、だれ?

やさしい笑顔の、ひとたち。
“ほーむ”の、ひとたち。


長い黒髪の、可愛らしい女の子。
黄色のゴーレムを連れた男の子。
鋭い目をした刀の男のひと。
眼帯をつけた、赤い髪の男のひと。
黒い服。胸の十字架。

知って、いる?……知らない。
でも、知っていた。


誰だろう?誰だったっけ?
おかしいな。知っていたはずなのに。
このあたたかな思いを、私はずっと覚えていたはずなのに。


ココ、は、ドコだろウ

はやクかえらナくチャ

でも、ドコへ……?





「ルフィア?」

「…………ん、」


あたたかい夢から覚める。
そこは、あたたかいティキの腕の中で。


「ティキ……」

「よく眠ってたな」


見上げた先、優しく笑うティキ。
でも、照明の逆光で顔がよく見えないや。

見えない、顔。
分からない、ひと。
思い出せない、ひとたち。
大好きだった、はずの―――


「……なん、だっけ」


私、そういえば何の夢見てたんだっけ……


「どーした?悪い夢でも見たのか?」

「うーん……そうなのかも」


もやもや。もやもや。
帰らなくちゃ。そんな気持ちはすぐに掻き消えて。
急速に黒く塗りつぶされていく夢のカケラ。
反対に、クリアになるティキの表情。
優しくて、愛おしくて。少しだけ哀しい、笑顔。


「安心しろ。ずっとオレが傍にいるよ」

「うん」

「ルフィアは、ずっと、オレの物だからな」

「うん」


そう。
私は、ティキの、物だから。
ずっとずっと。いままでも、これからも。


「愛してる。ルフィア」


だから忘れちまえ。お前を縛ってたモン、全部。
これからはオレがお前の、帰る場所だよ。


折れそうなくらい強く抱きしめられて、囁かれたティキの言葉。
私はいま心から幸せで、幸せで。
だけどそれがほんの少しだけ、悲しいのは―――


(彼を愛してるという気持ちが)
(いつから生まれたのか)
(それさえも思い出せずに)


fin
”愛しい人、君を離さない”

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