だからこうして笑っていて
「だぁああ!くそ!また失敗だってばよー!」
水風船の破裂音の後に、悔しそうなナルトの嘆き。
青い空と、白い雲。
木の幹を背にして、隣り合わせに座る自来也さまは、楽しくて仕方がないといった顔でナルトを見ていた。
「さて、この調子でいつまでかかるかのォ」
「そう言うならコツなり教えてあげればいいじゃないですか。そもそも螺旋丸ですよ?」
「こういうものは自分で考えてなんとかするモンだからの」
「……楽しそうな顔して。よく言いますね」
本当に。
四苦八苦しながらも修行に没頭する愛弟子を見る自来也さまの瞳は、少年のようなきらきらした光を放っていて。
ああ、嬉しいんだなあって。
次世代を担う忍は、ゆっくりと、でも着実に成長を重ねている。
そんな時代の流れの中にいられることを、彼は本当に喜んでいるんだ、と。
そう思ったら、隣にいる私でさえなんだかあたたかな気持ちになる。
「あ、また割れた」
「こりゃ、まだまだ先は長そうだ」
「自来也さまが昼寝する間もないって言ってましたよね、ナルト」
「はっはっは!」
一つ豪快に笑って、自来也さまの瞳が私に向けられた。
きらきらの目が大きく見開かれて、やがて三日月の形になる。
「何だ。そういうお前も楽しそうじゃねぇか」
「……へへ」
楽しい。
でも、それとは少し違う感覚。
そう。きっと、嬉しくて。
「こうして自来也さまと一緒にいられるから、嬉しいんです」
この時代の流れの中に。
忍びという修羅の中であっても、自来也さまと共にいられること。
それだけで、私の心はこの空のように、どこまでも青く晴れ渡ることができるから。
「嬉しいことを言ってくれるのォ!」
いっそう目を細めて、心一杯にあなたが笑ってくれること。
ただそれだけで、私は。
「……今日も、空が綺麗ですね」
また一つ、水風船の割れる音がした。
fin