ツイッターで書いた140文字SS その2



愛してみろよ/クロリン
 彼は傭兵。金しだいで人間にも魔物にも味方する。
「憎まれて当然だ。それだけのことをした」
 彼の髪は精緻な銀。死にかけた星の輝き。
「憎まれるべきだ」
 彼の瞳はどろりと濃い群青。何もかも諦めた夜空。
「憎んでくれ」
 彼の慟哭が聞こえる。私にはもう、彼を許すことしかできないのに。
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四面楚歌/ブロマゼ
 八面六臂の英雄はとうとう一本きりになった手で鋼の剣を抱いていた。傍らには女が一人、異形の足音の重きを耳朶に聴く。それは凱旋の賛歌でもあり、おどろおどろしい遠吠えでもあった。男の、血糊で固く変じた黄金の髪は、女のそれによく似た色をしていた。
 女が男の傍らを去る事は終ぞなかったという。
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寂しい、と呟いて/ブルリン
○寂しい、と呟いてくれたら、そっと君の隣に座ろう。そして家族のように恋人のように一晩じゅう寄り添っていよう。でも君はきっと何も言わないね。寂しさがないと強くなれない君を、不器用に笑わせることだけ、僕は上手になってしまった。
●寂しい、と呟いてみたら、君はそっと温めてくれるかもしれない。そして産まれた熱があたしの寂しさをとかす。でも寂しさのとけた後の穴はもっと寂しいだろう。鋭くいさせてね。役目を終えて鈍く鈍くなったいつかの日には、震えるその手に口づけにいくから。
(お題はshindanmaker.com/587150から)



たった一つのエンディング/クロマゼ
 彼の腕の中は意外に居心地が良くて思わず頬が緩んだ。暗紅のマントはごわついていて嫌い。でも首と肩を支える腕にきつく力がこもっているのは好き。私を覗き込む顔に沿って流れる銀の髪。好き。私の手を握る掌の大きさ。好き。
 後悔。こんなに好きなんだから、もっと前から抱き締めてもらえば良かった。
(お題はshindanmaker.com/587150から)



おいしいごはんになれるといいけど/ジルマゼ
 私はにんじん。市場で男に買われたの。定価で。男は帰る道々私をにらんでブツブツ言う。聞けばにんじん嫌いの女がいるとか。その女にどうにかして私を食べさせようとしてるみたい。(彼女のために料理なんて素敵よね。)調理法のレパートリーからして料理は上手そうだけど……さて、うまくいくかしら?
(お題はshindanmaker.com/587150から)



愛が歪んだ/ルミド
 最初はきっと素直な形をしていた。しかし我々は一つだけの愛で生きていくには愛されすぎていて、そして優しかった。だから歪めた。我々は捨てられない多くの中になんとかこれをねじ込んだ。我々は正しくないが間違えてもいない。戦場に愛し合おう。二つの心臓を、我々自身の手で裂かなくてはならない。
(お題はshindanmaker.com/587150から)



君のいない春に眠る/クロリン
○月×日
 今日は花が咲いた。手折ろうとしてやめた。明日スコップを持っていって、植えかえてやるつもりだ。(調べると多年草らしかった。来年も再来年も咲くようになるだろう。)
 最近はもうすっかり春らしくなったが、夜、少し冷える。寝所が広く冷たいのには、まだ慣れない。明日が待ち遠しい。
(お題はshindanmaker.com/587150から)