「イヤッハーアアアア!」 学校へ行く道を、自転車で駆け下りていく。周囲の風景が飛んで行く飛んで行く飛んで行く。いや、もう何ていうんでしょう。叫びたい。叫びたいです。ああでも怖過ぎて悲鳴すら出ない! 「気持ちいーなー!」 気持ち良くありませんむしろ気持ち悪い! そう叫び返したいけれど、多分、僕の目の前で暴走しているこ幼馴染はきっと聞かないだろう。うなじの辺りで無造作に括られた彼女の髪が、彼女の後ろに乗っている僕の顔をばっさばっさと打つ。それが目に入って一瞬目を瞑ったが、何か、シャンプーの良い匂いがして何だか恥ずかしくなった。 どうして僕は、彼女の自転車の後ろに乗って坂を駆け下りているんだろう。ああ、そうだ、確か学校に遅れそうだったんだ。でも、そうだとしても、こんなふうに危ないことをすることはないだろうに。彼女はいつもこうなんだから。いつだって破天荒で明るくて強引で、……憎めない。僕はいつも彼女に押し負けて、悪巧み(?)に乗せられてしまうのだ。 一旦思考を止め、僕は前を見た。もうすぐ十字路にさしかかるところで、もちろん車の通りも多くて、それはつまり……。 「ああああああブロントッブロント止まってええええええええええええええ!」 「うはははあはレッツゴー!」 僕は必死に叫んだが、彼女――ブロントは全く耳を貸さない。そのまま……そう、そのまま彼女と僕は、十字路に突っ込んでいった。 ……ああ、右側に大型トラックが見える。うわあ運転手さんめっちゃくちゃ驚いてるじゃないですか。ごめんなさい、何故かわからないんですけど僕、彼女に逆らえなくて。本っ当、ごめんなさい。 ……数秒間にそんなことを考え、僕の意識はブラックアウトした。
「テミ!」 大きな声で自分の名前を叫ばれ、びくっとして飛び起きた。あ、あれ、僕は一体何をしてるんだろう。目の前にはブロントの顔があって、……多分、僕はどこかに寝そべってる状態だ。ブロントの顔がぐいー、と後ろに引いたので、ここがどこなのかがわかった。学校の保健室だ。僕は例によってベッドに横たわっていて、ブロントはその隣りの椅子にちょこんと腰掛けている。 そ、そういえば、あれはどうなったんだろう……。トラックを見たことは覚えている気がするけれど、それ以降の記憶が全く無い。その時、シャッとカーテンが開いて、保健室の先生が姿を現した。 「あなた、気絶してブロントさんに運ばれてきたのよ? わけを聞けば、ブロントさんは『怪獣に襲われた』なんて言うし……」 はあ、とため息と共に言われ、頭を抱えたくなった。そうか、多分僕はあの時、恐怖の余り失神したんだ。情け無い……。っていうか、何ですかその言い訳。もっとマシな事言えなかっ……いや、ブロントが言うはずないか。 「超デカいゴジラが俺たちを襲ったのさ!」 ……ごめん、とりあえずその言い訳却下です。ブロントは親指をビッ、と立て、良い笑顔で先生に宣言している。しかし、ブロントの破天荒な性格は学校中に知れ渡っているので、先生も軽く受け流していた。それが幸せなのか不幸せなのか……僕にはわからない。 僕はのそのそと起き上がって、先生にぺこりと頭を下げて保健室を出た。ブロントが何故かくるくると回りながらついてくる。スカートが捲れそうになっていて、慌てて目を逸らした。 歩くたびに、顔の横で髪が揺れる。ブロントの髪より少し薄い色の金髪は、そろそろ切らないと校則違反になる長さだ。そんなことを考えているうちにようやく満足したのか、ブロントが至って普通に歩き出……さなかった。回るのを止めた彼女は、今度はスキップしながら僕の隣りにいる。ちら、と横目で彼女を見て、僕はため息をついた。何故? ……身長だ。彼女が164cmなのに対して、僕は162cm。男として情けないというのは、時代遅れなんだろうか。 ……僕がこうやって身長について悩む理由。それはやはり、ブロントが好き……だから。小さい頃から彼女に流されまくっているのだけれど、どうにもそれが嫌じゃない。騒がしい彼女の側にいると、楽しい気分になれる。一度、父親に『お前たちの性格が反対なら、男女で丁度良かったかもしれないのにな』とため息をつかれたことがあったが、僕はこのままでいい。そうでなかったら多分、僕はブロントを好きになることなんてなかっただろうから。 ……そうやって考え事をしていたせいか、廊下をやってくる人影に気付かなかった。なんか、なんかもう漫画のようにぶつかって、転ぶ。そして数秒後、胸倉を掴まれて持ち上げられた。 「テメェな、キチンと前見て歩けや、クソが!」 うわあ、ありがちな台詞ですね。そう思ったのだが、言ったら恐らく殴られることは目に見えているし、何より悪いのは僕なのでどうにもならない。そのまま黙っていると、『何とか言えや!』と叫ばれてしまう。 「え、と、あの……」 「スペシャルトロピカルワイルドキーック!」 僕が何か言おうと思った瞬間、目の前で火花が散った。 ……いや、正確には、ブロントの飛び蹴りが、僕を掴み上げた男の顔面に炸裂した。どこがスペシャルでトロピカルでワイルドなのかはわかりかねるが、今それは全く関係無い。男の力が抜け、僕は重力に従って地面に落下し、よろけながら立つ。ブロントは助けてくれたのか、と思った、一瞬後。 「ぐげえッ!?」 後頭部に凄まじい衝撃、僕の額と床がお見合いをしている状態。無様な悲鳴を上げ、僕は顔から床に倒れ伏した。頭に誰かの足が――否、ブロントの足が乗ってぐりぐりと踏んでいる。ああ、そうか、ブロントは僕を助けたわけじゃなかった。そうか、僕が悪いからな……うわあ……。 「クハハハハ! 生きとし生ける物ども全ては俺に平伏せぇええー!!」なんか滅茶苦茶なこと叫んでるんですけどこの人。僕の頭をぐりぐりと踏みつけながら叫ぶその姿はきっと輝いていたに違いない。 ……僕の目の前で伸びている男が、『し、白の水玉……』とうめいたのは、聞き間違いだということにした。
ようやく教室に戻った僕たちは、真面目に授業を受け……られなかった。例によってブロントが暴走し、手がつけられない状態になったのだ。先生も生徒も既に諦めている。ていうか生徒の大半は楽しんでます。そんな中僕は、1人ぼーっと思考を続ける。 何でブロントは自分のことを『俺』って言うんだろう? ……あ、僕にわかるわけがなかった。ブロントのことだから、昔何かのアニメを見て『カッコいい!』とか思って真似したのかな。それから、どうしてあんな性格破綻が起きたんだろう? ……これは天性のもの、かな。うん、多分そう。えーと、どうしたら僕の気持ちに気付いてくれるのだろう? …………うわあ、何考えてるんだろう。 ……えーと、結論から言うと、僕はやっぱりブロントが好き、だ。幼馴染の親近感じゃなくて……ほら、もっとこう、キスしたい、とかっ……。うわわわわ何考えてるんだよ僕! そんなふうにぼーっとしていたせいか、僕は背後からの攻撃に反応できなかった。 「メラリンコックドメスティックチョーップッ!」 あああやっぱり意味不明なネーミング。それがわかった瞬間、僕の意識は再び闇へと吹っ飛ばされていたのだった。
光、を、最初に感じた。数回瞬きをして、白い天井を見つめる。ゆっくりと身体を起こすと、思った通り、ここは保健室だった。さっきと違うのは、ブロントが椅子に座っていないということだけ。 「あら、目が醒めたの?」 カーテンが開き、半ば呆れたような表情の先生が現れた。僕は苦笑で返し、いつもありがとうございますと言う。横目で時計を確認すると、もう4時限目に突入している時間帯だった。挨拶もそこそこに保健室を飛び出、廊下を小走りに歩き出す。そしてそのまま僕は教室に直行するはず……だったの、だが。 廊下の窓からは、校庭の景色が見えた。そう、見えたのだ。数人の男子生徒とブロントが、向き合っているのが。何をしているんだろう、と考えるより先に、身体が動いた。玄関から出てもいいだろうに、どうしてか、僕は窓を開け、校庭に飛び出ていた。 1階なので、怪我をするわけでもなく着地して、走り出す。 その間にも、乱闘が始まっていた。鈍い音と共に、ブロントの蹴りが男の1人の顔面にめり込む。もう1人の男がストレートをかまそうとしたが、ブロントは身体を捻ってそれをかわし、その回転を利用して踵落としをそいつの脳天に叩き込んだ。悲鳴と打撲音と……
「だっしゃあああああ!」
……ブロントの狂気の絶叫。僕は必死でそちらに走るが、距離はまだ50メートルは開いている。その間にも、ブロントは次々に無頼漢を吹っ飛ばしていく。しかし、それも長くは続かなかった。むくりと起き上がった男の1人が、ブロントの腕をがしりと掴み、地面に引き倒す。お、おい、ちょっと、ブロントは仮にも女の子なんですけど……! 「ぅぐ……っ」 詰まった声で悶絶したブロントの身体が地面でバウンドし、土埃と共に転がる。その時僕は後10メートルくらいのところまで来ていて、当然、気付かれた。 「なんだてめ……ごはッ!?」 唾を飛ばしながら睨んできた男の1人の顎を殴りながら、ブロントに駆け寄る。しかし、大丈夫と言う前に、背中に蹴りが飛んで来て僕は咳き込んだ。でも、今僕が避けたら、きっとブロントが蹴られる。そう考えると、逃げることなんて出来なかった。
バキッとか、ゴキッとか、そういう音が聞こえる。それは僕の背中が奏でている音なんだけれど。激しい痛みに、意識が飛びそうになる。それを抑えようと、僕は目の前のブロントの身体をきつく抱き締めた。 「う……」 呻き声と共に、ブロントの目が開いた。その蒼くて綺麗な目を見て、今更だけど、彼女の良い匂いとか、密着した体制を思い出す。彼女の身体の意外な細さとか、柔かさとかにちょっとドキリとさせられた。 ……が、それもやっぱり、長くは続かなかった。 「俺を足蹴にする権利など貴様らには無ーい!」 元気な絶叫と共に僕の身体は投げ飛ばされ、校庭に転がった。幸い痛みはさほどない。げほげほと咳き込んでブロントの方を見ると、……そこは地獄絵図と化していた。 「テクニカルストレートパーンチッ!」 「ごげはああッ!」 「バイオレンスロイヤルキーックッ!」 「ぐぼげぇえああッ!」 「ゆっ許しッげふぅうッ!?」 「フハハハハハ跪けぇぇーい!!」 やっぱりよくわからないネーミングセンスの攻撃が、男たちを地面に沈めていく。許しなど乞うのは無駄らしい。ていうかブロント、スカート気にして! めくれるめくれる! キックは駄目ー! 「ひいいいいッ!」 「何ッ!? 不届き者、勝負せーい!」 悲鳴を上げて逃げ出していった男を発見したブロントが、それを追いかけていく。僕は呆然としていたが、それを見、追おうとしてよろよろと立ち上がった。屍となった男たちの側を通り抜けるさいに聞こえた『白の水玉か……』という言葉。ああそう言えば廊下でも言われてたっけ。何のこと? ……答えはキックで見えるものだ。
ブロントが駆けていったのは、校舎裏の薄暗いところだった。嫌な予感が、そう、凄く嫌な予感がして、それは例外なく当たるものなのだ。追いかけてきた僕が見たのは、やっぱり嫌な光景だった。 3人くらいの男たちに、ブロントが押さえ付けられている。制服のボタンも外されかかっていて、何が起ころうとしているのかはよくわかった。 「ちょっ、と!? 何してるん、ですかッ!」 僕は切れ切れに息を吐いて、叫んだ。くるりと男たちが振り返る。多分さっき逃げた男は、ここに仲間がいるのを知っていて、誘き寄せたんだろう。汚い手段だ。 「何? このクソアマに道理っつーもんをたたっこんでやろうってだけだろうがよ!」 僕の言葉に、笑いながら返す男。そのふざけた台詞に、他の男たちが爆笑する。確かに、確かにブロントは常識外れだけど、そういう方法を使うこと無いじゃないか。 ……当のブロントはと言えば、『俺の前に立つなー!』だとか、意味不明なことを叫んでいる。 「そいじゃ、イイコトしましょうか、ブロントちゃん」 気持ちの悪い笑みを浮かべ、男がブロントに迫る。ブロントはぶすくれた顔で、意味すらわかっていないようだ。 ……もう、僕にはどうしようも無かった。どうしようも無かったから、…………蹴った。 「ごはあっ!?」 悪役っぽい悲鳴を上げながら、ブロントに覆い被さっていた男が吹っ飛んでいった。僕は息を切らしながら、他の2人に向き合う。蹴られたことはあっても、蹴るなんて滅多にしないもんだから、加減も何もできない。というか、殴り合いの喧嘩なんてどうしたらいいのかわからない! 男たちは、僕みたいなひょろひょろが歯向かうとは思ってもみなかったらしく、唖然としている。僕はとりあえず、……そいつらに突っ込んだ。 一発目は、避けられた。もう1人に蹴られて、横様に転がる。ということは、ブロントはもう逃げているはず……と思ったが、そのままの位置でけらけらと笑っているではないか。 「は、早く逃げっ……っぐ!」 ブロントに言った瞬間、頬に衝撃が襲った。殴られたのだと理解してすぐ、更なる衝撃。頭がくらくらする、が、やられっぱなしは駄目、だ。ブロントが見てるんだって。これでも一応好きなんだよ! カッコいいとこ見せたいんだって! 「……っうわぁぁああああ!」 滅茶苦茶になった思考のまま、叫んで思いっきり拳を奮う。 1人の頬に拳が突っ込んで、痛い。けどもう1人の蹴りを肩に食らって、痛がってる暇なんて無くなった。 「こンのクソがあッ!」 さっき僕が蹴った男が、ようやく起き上がってきて向かってきた。ちょっとよろめいていたパンチだったので、僕でも避けることが出来る。 ……がしかし、もう2人の男だっている。腹に衝撃、思わず吐きそうになる。ぐっとそれを堪えて、相手の頬を殴り返した。それは結構効いたようで、地面に倒れた相手は起き上がってこない。 「がっはっ!」 頬と背中に同時に感じた衝撃に、目の前で星が飛んだ。ヤバ、い。 喧嘩なんてするんじゃなかった。どうせ僕はひょろひょろだし、ブロントに守られてる方がお似合い、かな。ブラックアウト寸前の視界に映ったのは、男2人の頭をぶつけ合わせて勝利の高笑いを発するブロントの姿だった。 ……良かっ、た。
「テミ! 起きないと死刑DAZE!」 一部英字表記な声が聞こえて、僕は目を開けた。途端に感じる痛み。痛み。尋常じゃない……もう嫌だ……。 そう考えて呻いていると、ブロントの顔が目に入った。口の端が切れ、膝が擦り剥けているが、その他は全くの無傷だ。 ……僕は多分、全身打撲とかたくさんの擦り傷とかなんだろうな。そう考えると、気分が重くなった……が、ブロントの手前、にっこりと笑ってみせる。 「大丈夫?」 「OH! 愚問だなテミ君! 俺は最強だろ!」 ブロントがビッ、と親指を立てて僕に宣言する。 そのいつもと同じ姿に、なんだかホッとする自分がいる。 そういえば、と思って辺りを見回すと、ここは保健室ではなく、さっきと同じ校舎裏だった。 良く見れば、さっき倒した男3人も、ブロントの後ろに転がっている。その間抜けな顔に、僕はプッと吹き出してしまった。もし聞かれていたら殺されそうだけども、今は気絶して聞いていないみたいだ。 「ところで、どうしてあんなのに絡まれてたの……?」 今までずっと気になっていたことを、ブロントに問う。あんなの、とは、校庭にいた男たちのことだ。何についていちゃもんをつけられていたのか、全く検討がつかない。僕みたいに、ぶつかった程度のことなら、人気者のブロントのことだ、流してもらえたはず。 「ん? あの集団のボスみたいな奴の頭に飛び降りたのさ!」 ……、え。 「ち、ちなみにどこから……?」 「もっちろん、2階に決まってるじゃないかテミ君!」 「なにしてるの!?」 そこまで、そこまで無鉄砲だとは思わなかったよ! いや、やりそうだけど、だけど、そうやって無駄に喧嘩売るようなことはやめてほしい。現に、僕が来なかったら危なかったじゃないか。どうしてそういうことするの。こんなに心配してるのに。どうして、僕を心配させるようなことばっかり。 溜めていた気持ちが爆発して、……そうして、気付いたら、ブロントを地面に押し倒していた。彼女はいつもとは違う、驚いた顔で僕を見ている。 「ブロント、もう、危ないことしないで」 僕はいつもより強い口調で言った。似合わないのはわかっているけど、真剣な言葉を。ブロントは何故か、黙って僕の言葉を聞いている。いつもなら変な言葉と共にアッパーが飛んで来るところなんだろうけど、今は、それはしないで欲しい。 「心配させないで。僕は、君が傷付くのは嫌なんだ」 やっぱり、僕にこういう台詞は似合わない。けど、本心なんだから仕方が無いじゃないか。ブロントの顔がぐにゃっと歪んで、自分が泣いてることに気付いた。 「僕、君が好きなんだよ……」 大事な部分は、涙で掠れて、か細くなってしまった。もう、耐えられない。我慢できない。君を傷付ける全てから守ってあげたいけど、僕はどうにも非力で。それでも好きで。つりあわないのかな。 ……そうして僕が感傷に浸っていた時、だった。 「……だっしゃあああああああッ!!」 突如、ブロントが叫び、顎に強烈な痛みが走った。僕の身体は宙に浮き、吹っ飛んでどさっと落ちる。わけがわからない。いや、ブロントがアッパーをかましてくれたってことはわかるんだけど、よりによってこのタイミングでですか!見れば、ブロントが僕の真ん前に仁王立ちしていた。 「俺は最強だ!」 あ、はい。それはよく、わかります。 「故に、お前に心配される必要など蟻の涙ほどの必要もなーいっ!」 …………え、何、それ。僕の告白全部無駄!? っていうか蟻の涙じゃなくて雀の涙では!? ……突っ込みどころは多々あったが、あえて飲み込んだ。というか、言葉が出なかった。っていうか結局、告白スルー? 「だが!」 ……だが? その言葉に希望が見えてくる。もしかして、もしかし……。 「台湾バナナの方を好きになれ!!」 「なにそれ!?」 一気に身体中の力が抜けていく。台湾バナナ。何故。伝わっていなかったのだろうか。はあとため息をついた僕を尻目に、ブロントはすたすたと歩いていく。ふはははははは、という謎の笑いを残しながら。ぼうっとしていた僕は、慌ててよろよろと立ち上がり、彼女を追った。その時見た彼女の耳が見たこともないくらい真っ赤なのに気付いて、僕の顔の温度は急上昇した。
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