促すような声と共に、ブラックコーヒーがなみなみと入ったマグカップが差し出された。僕は差し出した人間を見もせずにそれを受け取り、ありがとうと短い返事を返した。起き抜けのブラックコーヒーはキツいかもしれないが、確実に目が醒める。 カーテンの隙間から差し込む日光が心地良い。今日も良い天気だ。 「今日、どうする?」 「とりあえず散歩」 隣でココアを飲む幼馴染に問い掛けると、鋭い声で、のんびりとした回答が返ってきた。僕は肯定の意を示す為に頷き、そして……。
……目が醒めた。全く、可笑しな夢を見たものだ。平和な世界。のんびりとした退屈な日常。今感じる朝日は、僕にとって苦しいだけのもの。隣を見れば、夢にもでてきた幼馴染の姿があった。夢の方が、多少柔和な顔付きをしている気がする。 「ヤな夢見たな」 「雑魚の象徴」 ぼそりと呟くと、手厳しい答えが返ってきた。新聞から目を逸らしもせずに言った幼馴染……否、相棒の金色の頭をわしわしと撫でる。一種の嫌がらせみたいなものだ。すぐに、不機嫌な顔で振り払われてしまうのだが。別にいいじゃないか。夢にだけ棲んでいる脆弱な感情は、脆いそれらは、決して現実に干渉しない。 「行くぞ」 ぼそりと呟かれた言葉。僕は机に乗っていた銃を掴み、彼の後に従った。脆い思い出も願望も、現実では既に葬られたもの。それらは、そう、夢の世界に閉じ込められているだけだった。
(夢を見ながら阿呆な顔晒して死ぬなんて、僕らの柄じゃないよね?) (お前にはお似合いかもな) (!? ひっど!)
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