20170305


[たまの休みなのだから私は遠出をして、眠らない。春を待つ。]

 コンビニのアルバイトを終えて帰路につく。おつかれさまでーす、なんて気だるい挨拶もそこそこに、かろうじて舗装された国道を逸れてど田舎丸出しのあぜ道に入っていく。時刻は午前二時、夜明けはまだ先だ。まだあたりは真っ暗……のはずなのに、あの光はなんだ?
「スマホ?」
 思わず声が出た。そしたらスマホ持ってる人がこっち見た。スマホの光が顔を照らす。女の子、だ?
「えっ」
 また声が出た。えっだって、なんで近付いてくるの? ていうかこんなど田舎でなんで? えっ? 見たことない人? 田舎コミュニケーションなめんなよ全員顔割れてるんだよ。えっ待って。
 手をぎゅっと握られた。
「ね、あなたのこと待ってたの」
 嘘、なにこれドラマかよ。




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