序曲 | ナノ
ざあざあざあ
雨が降っている。
ざあざあざあ
止むことはない。
ねぇ、どうして?
どうしてあなたは……
『 』
認めたくない一文字を、現実を、わたしは奥底へしまいこむ。
つれていってよ。わたしも一緒に。
それができないなら、できないと言うなら、
わたしは、もう―
目を閉じる。頬を濡らす雫は雨か、涙か。
「さよなら」
大きく息をすって、わたしはうたう。
きっとこれが、最後のうた。わたしが紡ぐ、最後の旋律。
あなたのいない世界を、わたしは永遠に閉じこめよう。
これは、失われた音。
忘れてしまった、なみだのうた。