プロローグ | ナノ
 

 日常が、崩壊した。

 差し伸べられたてのひら。
 どくんどくんと脈打つ心臓がうるさい。
 今まで何とも思わなかったのに、おかしい、どうしよう。


 きっかけは突然。でも、理由はなんだかわかっていた。

 こんなに近くにいたのだから、今まで気づけなかったんだ。
 当たり前だと思ってしまっていたんだ。

 本当は、きっと、ずっと前から。


 ああ、どうしよう。気づいてしまった。
 いつも通りがこんなにも難しい。

 言ってしまったらもう戻れないから、私はこの想いをまだ秘めていよう。


 ただ君の側にいるだけの日常は崩壊してしまった。
 心があばれて、こんなにも息ができない。


 見上げた視界に明るく光る。
 なんて珍しい。流れ星だ。


 ああ、お星様。柄にもないけど願ってみる。

 願わくば、新しく始まる日常が、あいつを想える日常が長く長く続きますように。まだ、側にいられますように。


 きらり、空が光った。
 それは願いをうけてだろうか。わたしにはわからない。


 ただ、予感がする。
 何かが始まる、そんな予感。


 星が通った後の空は、驚くほど静かでいつも通り。小さな星が、遠くで瞬くだけだった。


 そして私は柄にもなく、そんな夜空にあいつの事を想うのだ。